横浜線沿線散歩街角散歩
八王子市廿里町〜高尾町
秋の南浅川
(高尾駅〜高尾山口駅)
Visited in October 2009
秋の南浅川
十月下旬の秋晴れの日、JR中央線高尾駅に降りた。南浅川に沿って上流側へと辿って行こうと思ったのだ。国道20号を車で通るたびに、いつか機会を設けて歩いてみようと思っていたところだった。
JR高尾駅を北口へ出て、特徴的な意匠の高尾駅舎を振り返りつつ、北へ辿る。すぐに国道20号の交差点だ。ここから東へ、国道20号はイチョウ並木で、秋の黄葉の美しさがよく知られている。今はまだ黄葉には早く、イチョウの葉は青々としている。
高尾駅舎甲州街道

交差点からさらに北へ辿る。すぐに南浅川を越える。川沿いには歩ける道はないようだ。そのまま北へ進むと「廿里前」という交差点がある。これを左(西)へ折れれば南浅川の上流側へと辿れるに違いない。道は車両の通行もある一般路だが、それほど広い道路ではない。道脇には歩道部分を示すように石畳が設けられ、なかなか素敵な道だ。道脇に水路が沿っているのもいい。歩いて行くと道沿いにはお地蔵様の祠や小さなお社が建っている。昔から人々の往来があった道なのだろう。道脇のフェンスに「イノシシ出没にご注意!」との看板が廿里町の名で設置されているのを見つけた。このような住宅街の中にもイノシシが出没することがあるのかと、少しばかり驚く。
廿里町の道お地蔵様の祠とお社

住宅が建ち並ぶ中を歩いて行くと、ようやく道が南浅川の河岸に出た。対岸に八王子市の浅川事務所の建つ辺りで、南浅川を跨いで歩道橋が架かっている。川には滝のような段差が設けられている。さきほどの道沿いの水路はここから導かれているもののようだ。歩道橋に上がると視界が開けて爽快だ。
南浅川歩道橋からの眺め

道は南浅川の左岸側に沿って延びている。河岸には木々が並び、北側にも木々の茂った山が迫り、周辺は緑濃い佇まいになってくる。見上げればすんだ秋空を背景に見る木々の緑が鮮やかだ。この辺りまで来るとすっかり街の喧噪が遠くなり、川の流れの音がよく聞こえる。
南浅川をふりかえる

さらに進んでゆくと「白山橋」という橋が架かっている。この北側の丘に白山神社が建っており、昔から参道として使われてきた橋なのだろう。白山神社に立ち寄り、散策の無事を祈願してゆこう。高みとなった境内は見晴らしが良く、南には中央線の車両が見える。
白山神社

白山橋から上流側へ、左岸側には山肌が迫り、鬱蒼と木々が茂っている。その河岸に細い舗道が沿っている。対岸の竹林を眺めながら進んでゆくと、やがて目の前に国道20号と中央線の橋が見えてくる。国道20号は「両界橋」という橋で南浅川を跨ぎ、ちょうどその上を中央線の線路が跨いでゆく。両界橋まで来るとさきほどまでの静けさが嘘のように喧噪に包まれる。両界橋では国道20号を横断できないので、少し東側へ戻り、「両界橋東」交差点で国道を横断する。国道の南側の歩道を再び西へ向かおう。
川沿いの小径両界橋からふりかえる

両界橋のすぐ東側、中央線の線路の下に小さなトンネルが設けられている。煉瓦造りのように見えるそれは機能としては”跨道橋”なのだと思うが、”ガード”というよりは、まさに”トンネル”と呼ぶのが相応しい様相だ。その佇まいが興味を覚えるところだが、このトンネルをくぐった先は昔から一般の個人の住宅が建っており、中央線の線路がここを通ることになったとき、そのお宅のアプローチの道を塞いでしまうことになってしまうため、このような形になったのだと、かつて何かで目にした記憶がある。それにしても何やら興味を引く佇まいで、街歩き趣味の人たちにはよく知られたもののようだ。
トンネルのような跨道橋お地蔵様

両界橋の歩道から南浅川の上流側を見ると、川中には岩塊がいくつも横たわり、木々が枝を張り出し、山深いところを思わせるような野趣溢れる姿だ。もっと近くから見たいと思うのだが、河岸に沿った舗道などはないようだ。仕方なく国道20号の歩道を辿ってゆく。
両界橋から見る南浅川上流部

両界橋から100メートルほど行くと「西浅川」交差点、旧甲州街道が右手に逸れてゆく。さらに100メートルほど進むと国道20号の西側に「西浅川児童遊園」がある。小さな広場だが、早春には梅が美しい。そのすぐ先が上椚田橋だ。国道20号が小仏川を越える。橋の横手が小仏川と案内川との合流点だ。小仏川が南浅川の本流で、案内川が支流ということになるのだろうが、一般に南浅川と呼ばれるのは小仏川と案内川とが合流してからだ。小仏川は旧甲州街道に沿うように流れ、その周辺は「高尾梅郷」の名で知られる梅の名所だ。旧甲州街道は梅の咲く頃に何度か歩いたことがあるから、今回は案内川に沿って歩いてみよう。
上椚田橋から見る南浅川と京王線

国道20号と案内川との間には住宅が並び、その隙間から案内川が見え隠れする。案内川の対岸には山裾を辿って京王高尾線の線路が延び、ときおり行き交う京王線の車両の姿が見える。300メートルほど進むと国道20号が案内川を越え、国道と案内川との位置関係が逆転する。さらに進んでゆくと頭上を京王線の線路が跨ぎ、京王線の高尾山口駅が近くなる。

高尾山口駅周辺を少し散策してゆこう。高尾山は都心から来やすいこともあって、以前から身近な観光地として人気があったが、2007年に発行されたミシュラン・ガイドで”三つ星”を獲得してからはますます観光客が増え、たいへんな賑わいになっているそうだ。京王線高尾山口駅周辺から高尾登山電鉄の清滝駅周辺にかけて歩いてみる。紅葉にはまだ早い季節だが、確かに以前より観光客の姿が多い気がする。外国人観光客の姿も少なくない。土産物屋や飲食店の並ぶ、いかにも観光地然とした佇まいで、どこか遠くの景勝地に訪れた気分になる。観光客になった気分でひととき高尾山口周辺を散策し、川沿いのベンチで一休みしよう。
高尾山口駅付近清滝駅前
清滝駅付近清滝駅付近

秋の日暮れは早い。まだそれほど遅い時刻ではないのだが、ずいぶんと日が傾き、土産物屋の影が長く伸びている。そろそろ高尾山口駅に向かい、帰路を辿ることにしよう。
それほど長い距離を歩いたわけではないのだが、地元の人しか通らないような川沿いの小径から、観光客で賑わう高尾山口まで、変化に富んだ散策だった。高尾山はあまりに身近すぎて登ることはあまりないのだが、また登ってみようかと、そんな気になった散策だった。
秋の南浅川