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町田市相原町
大地沢
Visited in April 2007
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
大地沢
町田市の西端部、山々に囲まれて大地沢青少年センターという町田市の施設がある。宿泊室を有した本館の他にキャビンやキャンプ場なども用意され、自然の中での野外活動が可能なようにと造られた青少年施設だ。このセンターの最奧部は境川の源流部にあたり、周囲には豊かな自然環境が残っている。新緑も眩しい四月の下旬、大地沢を訪ねた。
【追記】
大地沢青少年センターは2023年(令和5年)4月1日から指定管理者制度が導入され、それに伴って「Nature Factory 東京町田」に名称変更されている。本頁内の「大地沢青少年センター」の記述はその旨、読み替えられたい。
大地沢
大地沢へはバス路線もあるがやはり車での来訪が気軽だ。町田街道の大戸交差点から大地沢青少年センターへの案内標識に従って奧へ進むと、やがて「青少年センター入口」バス停近くに第一駐車場が、そこからさらに数百メートルを奧へ進むと第二駐車場が用意されている。もちろん第二駐車場を利用するのが青少年センターには近いのだが、第一駐車場からのんびりと歩くのも悪くない。第一駐車場から第二駐車場までの道は、左手(南側)は木々の茂る山肌が迫っているが、右手(北側)には長閑な里山風景が広がっている。道脇には畑地が広がり、畑地の向こうには新緑の丘が横たわっている。その美しい風景を楽しみながら歩くのがお薦めだ。
大地沢
第二駐車場から奧へ進むとすでに大地沢青少年センターだ。山中の渓流を思わせる様相の境川に沿って木道が奧へ伸びている。木立を抜け、湿地の傍らを抜けて進んでゆくと、フィールドアスレチックの設置された広場がある。周囲は深い木立の山肌に囲まれ、どこかずいぶんと遠いところへ来たような錯覚を覚える。フィールドアスレチックの設備を横目で見ながらさらに奧へ進むと青少年センターの本館の建物が見えてくる。

第二駐車場脇から本館横まで車両の通行可能な道路が延びている(関係車用の道路で一般車は通行できない)のだが、その道脇の本館近くの崖面に「小仏層」についての解説板が設置されている。この辺りの地層は1億3500〜7000万年ほど前の中生代白亜紀の頃の海の堆積物によって造られたもので、町田市内で最も古いという。粘板岩、千枚岩、硬砂岩などから成り、関東山地南部に分布する地層だという。すなわち関東山地の東端と多摩丘陵が接するところだいう旨が、解説板には記されている。こうしたものに興味のある人は見ておきたいところだ。

本館の横を抜けてさらに奧へ進むと、キャンプ場が設けられている。道路から一段低くなった右手に炊事施設があり、その周辺に木々に抱かれるように建てられたキャビンが点在している。その一角に「緑がいぶく大地沢」と題された案内板が設置されている。案内板には「平成二年七月吉日 相原保善会建之」とあり、江戸時代から相原の人々に利用されてきた大地沢の樹林が、幾多の変遷を経て現在まで残されているという内容が記されている。この豊かな自然を残すために尽力されてきた方々へ敬意を表して、訪れた際にはこの案内板に目を通しておきたい。

渓流のような境川を橋で跨ぎ、テントサイトの傍らを過ぎると、右手の山肌と左手の境川に挟まれて道が奧へと延びる。道はそれほど狭くはなく、車の通行も可能なほどの幅だがもちろん車両の通行はなく、舗装もされていない。200メートルほどだろうか、その道を辿って行くと、やがて「境川源流入口」の標識があり、そこから急に道が細くなる。まさに山中の渓流と化した境川に沿った小径を奧へ辿って行くと「境川源流地」に辿り着く。

大地沢
「源流地」というと土中から水が湧き出る様子を想像しがちだが、残念ながらこの「境川源流地」はそうではない。本来の境川源流地はさらに山深くの標高の高いところにあるそうだが、道も無く簡単には近づくことができないため、山中から流れ出てきた二本の小さな沢が合流するこの地点をもって「境川源流地」としているのだという。

傍らには境川についての解説板が設置され、武蔵と相模の境であったことから「境川」の名があるといった名の由来や、境川に架かる橋についての簡単な説明などが記されている。それによれば「境橋」という名の橋が最も多いそうだ。源流地のすぐ横にも小さな橋が架かっている。「境川源流地橋」との名があるようだ。これが境川に架かる最も上流側の橋ということになる。

「境川源流地」は深い木々に包まれ、街の喧噪から遙かに隔たっている。町田市内の、交通の便もそれほど悪くなく、気軽に来ることのできるところに、これほど豊かな自然の残る場所があることに少しばかり驚く。この静けさ、木々の匂い、せせらぎの音を充分に堪能してから、のんびりと帰路を辿ろう。
訪れたとき、青少年センターの炊事場を利用している親子のグループがあり、山中からは子どもたちの声が響いていた。帰路を辿るときにはフィールドアスレチックの広場に子どもたちの姿があった。どこかの幼稚園の親子遠足かもしれない。子どもたちは境川に降りて沢遊びを楽しんでいた。大地沢青少年センターは町田市の青少年施設だが、年齢に関わらず、そしてまた町田市在住でなくても(もちろん宿泊施設などの利用には料金が必要だが)利用可能なようだ。施設の詳細や利用料金などについては町田市の公式サイト(頁末「関連する外部WEBサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

「境川源流地」の南西側の山は町田市、八王子市、相模原市の市境に位置する草戸山で、標高365メートル、町田市の最高峰であるという。青少年センターの周囲の山肌には林を縫ってハイキングコースが設けられており、それを辿ってみるのも楽しいに違いない。豊かな自然に溢れた大地沢は春の新緑、秋の紅葉も美しく、初夏には蛍も見られるという。四季折々に自然の織りなす美しい表情を楽しむことができるだろう。
大地沢
大地沢