埼玉県嵐山町の「嵐山渓谷」は嵐山町の名の由来にもなった景勝地だ。美しい渓谷美を楽しめるところだが、紅葉の名所としても広く知られている。木々が紅葉に染まった十一月の下旬、嵐山渓谷を訪ねた。
埼玉県嵐山町の嵐山渓谷は昔からよく知られた景勝地だ。「公園の父」とも呼ばれた本多静六博士が「武蔵国の嵐山」と評したことから「武蔵嵐山」と呼ばれるようになった。これが現在の嵐山町の町名の由来である。戦前には大勢の行楽客が詰めかけて賑わったという。現在でも自然溢れる行楽地として親しまれているが、秋の紅葉は特に見事なものとして知られ、大勢の人々が紅葉狩りに訪れる。
嵐山渓谷観光の際の中心部は展望台が設けられている辺りだと言っていいが、紅葉もこの付近がいちばん見事だ。散策路脇に大きなモミジの木が並んで美しい紅葉の景観を見せてくれる。枝を伸ばしたモミジが陽射しに輝く様子は実に素晴らしいものだ。多くの人が足を止めて紅葉を見上げたり写真を撮ったりして楽しんでいる。
展望台横から散策路が南へ延びている。Uターンするように大きく蛇行を描く槻川に“半島”のような形状で挟まれたところで、細原と呼ばれるところだ。散策路を辿ると与謝野晶子の歌碑がある。この散策路も紅葉が美しい。当然のことだが、モミジ以外にもさまざまな樹木があり、樹林地の見せる晩秋の風景が興趣に富んでいる。
細原を辿る散策路をさらに進むとぽっかりと開けた場所に出る。かつて嵐山渓谷が行楽地として大いに賑わった時代に松月楼(後の一平荘)が建っていた場所だという。ここは今はススキの原っぱになっている。日に輝いて風に揺れるススキが美しい。このススキもぜひ見ておきたい。
展望台横から上流側へと延びる散策路から河岸近くまで、別の散策路が降りていて、そこでも見事な紅葉が楽しめる。散策路脇に広がる樹林にはモミジが多く、他の木々と共に見せる晩秋の色彩のグラデーションが美しい。こちらへ歩を進める人は多くはないようで、のんびりと静かな散策が楽しめるのも嬉しい。
槻川の下流側の河原には「嵐山渓谷バーベキュー場」がある。初夏から初秋にかけての行楽シーズンには大勢の人々で賑わうところだが、晩秋ともなればほとんど人の姿は無い。すぐ横を槻川橋が跨いで県道173号ときがわ熊谷線が通っている。この槻川橋の歩道から眺める槻川の眺めがいい。さすがに辺り一面を紅葉が染め上げるような景観ではないが、河岸のところどころに秋の色が加わり、晩秋の風情を漂わせている。
嵐山渓谷は初夏から夏にかけて川遊びやバーベキューを楽しむ人たちで賑わうところだが、秋の紅葉も“名所”の評判に恥じない見事さだ。のんびりと散策しながら美しい紅葉の景色を楽しもう。残念ながら渓谷美と紅葉との取り合わせを楽しめる場所は少ないのだが、それでも充分に紅葉の美しさを堪能できるだろう。体力と時間に余裕があれば大平山にも登っておきたい。澄んだ秋空の下、山頂付近からの眺めが素晴らしい。一度は訪ねておきたい、紅葉の名所である。
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嵐山渓谷の最寄り駅は東武東上線武蔵嵐山駅だが、駅から最短距離を通っても約3kmの距離がある。駐車場が設けられているので車の利用が便利だ。
来訪者用の観光駐車場が渓谷の上流側(北側)に設けられている。数十台の駐車が可能と思われる。
嵐山渓谷観光駐車場へは、嵐山町の市街地方面からなら国道254号の「消防分署入口」交差点から南西側へ折れ、道なりに進んで3kmほどで着く。ときがわ町方面からなら県道173号を北上し、嵐山町との市境を越える直前の交差点を左折、道なりに2kmほど進んで槻川を渡った右側だ。
遠方から訪れる場合は関越自動車道の東松山ICや嵐山小川ICがを利用すると近い。
嵐山渓谷の周辺には飲食店もコンビニエンスストアもない。お弁当を持参し、ピクニック感覚で訪れるのがお勧めだ。レジャーシートも忘れずに持って行こう。
塩沢冠水橋から1kmほど下流側、嵐山渓谷の最下流部に当たる辺りには槻川の河原を利用して嵐山渓谷バーベキュー場が設けられている。その数百メートル下流側で槻川が都幾川に合流点する。合流点を中心に都幾川右岸に桜並木が続く。「
都幾川桜堤
」として知られる桜の名所だ。春には訪ねてみるといい。北側の河岸には「蝶の里公園」もある。
谷川橋の1kmほど上流側、嵐山渓谷の最上流部には
遠山甌穴
がある。遠山甌穴にも観光駐車場が設けられているから、併せて訪ねてみるのもお勧めだ。
さらに槻川を遡るように北西へと辿れば
小川町の中心市街
、4kmほどで「道の駅おがわまち」に着く。町歩きの好きな人なら小川町の中心部で町散歩を楽しむのもいい。
嵐山町公式サイト
嵐山町旅の達人(嵐山町観光協会)
嵐山渓谷
遠山甌穴
彼岸花の咲く槻川散策回廊
都幾川桜堤
和紙のふるさと小川町