東京都あきる野市の東部、JR五日市線秋川駅の東方に秋留台公園という東京都立の公園がある。競技場をメインにした公園だが、園内にはバラ園も設けられている。バラの盛りの五月下旬、秋留台公園を訪ねた。
秋留台公園
東京都あきる野市、JR五日市線秋川駅やあきる野市役所の建つ辺りは南側の秋川と北側の平井川に挟まれた形で台地を成している。秋留台地という。秋川駅周辺は繁華な街の佇まいだが、少し外れると畑地の広がる長閑な風景だ。その秋留台地のほぼ中央に位置して「秋留台公園」と名付けられた東京都立の公園がある。秋川駅の一キロほど東方に位置し、公園の南側には五日市街道が東西に通っている。
秋留台公園
秋留台公園には全天候型第三種公認競技場が設置されており、運動公園としての性格が濃い。秋留台公園の東側にはあきる野市立の秋川体育館や市民運動広場などが隣接しており、それらと共にこの地域に於けるスポーツの拠点としての役割を担っている。
秋留台公園
秋留台公園はほぼ正方形の敷地で、その北東側を競技場が占める。五日市街道に面した南側は駐車場とサービスセンターで、中央部分に噴水やバラ園の設けられた「中央広場」がある。公園西側は「芝生広場」や「トリム広場」、「コニファー園」、「展望広場」といった区画になっている。
秋留台公園
秋留台公園のほぼ中央、競技場と駐車場との間にバラ園がある。大理石とレンガを用いて東欧風に設えられたものという。東西に長く造られたバラ園は、その長手方向に眺めると幾何学的でシンメトリックなデザインが美しい。両脇はイチョウが並び、その中にバラ花壇が端正に整えられている。東側から眺めるとバラ園の向こうには噴水のモニュメントが見えるが、それも景観として考えられているのだろう。
秋留台公園
バラ園には約80種、400本のバラがあるという。特筆するほど規模の大きなものではないが、初夏の陽光を浴びてさまざまな色彩で咲き誇るバラはたいへんに美しいものだ。バラ園外縁部は少し高くなっており、バラ園を見下ろすように眺めることになるが、そうやって俯瞰するバラ園も美しい。もちろんバラ園の散策路を歩きながら間近に観賞するのもいい。花壇のバラは散策路からは少し距離があり、写真を撮るときには花のクローズアップが撮りにくいのが写真趣味の人には少しばかり難点かもしれない。
秋留台公園
バラの花そのものももちろん美しいが、東欧風に設えられたという秋留台公園のバラ園はその庭園美がさらにバラを美しく見せてくれるようにも思える。バラの花を丹念に観賞しながら、そしてバラ園全体の美しさを楽しみながら、時間をかけて散策するのがお勧めと言えるだろう。
秋留台公園
バラ園の西側には噴水がある。公園のほぼ中央に位置し、秋留台公園の象徴のような存在と言っていい。中央には石のモニュメントが立ち、その周囲が池になっている。池の中にも石のモニュメントが横たわり、噴水も含めた池全体がひとつのオブジェのようだ。この噴水池は水遊びを楽しむこともできるようで、訪れたときも一組の家族が水遊びを楽しんでいた。夏の盛りの休日などにはきっと子どもたちで賑わうことだろう。定期的に清掃も行われるらしいので衛生面でも安心だ。
秋留台公園
「トリム広場」は各種のトレーニング器具が設置された一角で、隣接して子どもたちの遊具を置いた広場がある。遊具はブランコや小さなすべり台など、必要最小限といったところだ。
秋留台公園
「トリム広場」の西側には「コニファー園」があり、ブルースターやラインゴールドといったコニファー類を植えた花壇が設けられている。この花壇を巡る通路が螺旋を描いているのが面白い。形状がカタツムリを思わせることから「まいまい花壇」と名付けられている。
秋留台公園
「トリム広場」の北側は小高い丘があり、「展望広場」と名付けられている。丘の頂きには特徴的な形状のパーゴラが設置され、そこへ登れば周囲に視界が開けて爽快な気分だ。周囲に広がる秋留台地から、その向こうには丘陵地帯の山々の稜線が見える。パーゴラの中央には円形の方位図が設置され、周囲に見えるそれらの山々の名が記されている。風に吹かれながらひとときのんびりとこの眺めを楽しむのもいい。ちなみにこのパーゴラの建つ場所は北緯35°44′、東経139°18′、標高154mだそうだ。
秋留台公園
公園の西端部には公園の西側を通る「南北道路」に沿って遊歩道が設けられている。木々に包まれた佇まいが良い雰囲気だ。この遊歩道にはオーストラリアから輸入したレンガが敷き詰められているという。頭上の木々にばかり目が行ってしまうが、足元にも目を向けて歩くといい。
秋留台公園
バラ園と競技場の間には、ケヤキ並木の美しいプロムナードがある。頭上をケヤキの枝葉が覆って緑のトンネルとなり、瑞々しさに溢れ、木洩れ日も美しい。四阿やベンチ、テーブルなども置かれており、のんびりとくつろぐ人たちの姿も少なくない。バラ園でバラを堪能し、園内を散策した後は、このプロムナードのテーブルでランチタイムを楽しむのがお薦めだ。
秋留台公園
秋留台公園
秋留台公園は畑地の広がる台地に造られた公園だ。園内には特に起伏もなく平坦で、だから丘陵地の林などをそのまま活かして造られた自然公園などと比べれば野趣に乏しく、人工的な雰囲気が濃い。しかし東欧風のバラ園や石のモニュメントを配した噴水池、お洒落な意匠のパーゴラを置いた展望広場、そして煌めくような木洩れ日の美しい競技場横のプロムナードなど、端正に造られた公園の造形美が印象的だ。また展望広場のパーゴラからの眺めは素晴らしいもので、この眺めは秋留台公園の魅力のひとつと言っていい。お薦めだ。

訪れたのは五月の下旬、濃さを増してゆく新緑も眩しく、バラ園のバラも美しいものだった。芝生広場の脇ではカルミアの花が咲いていた。園内にはさまざまな種類の木々が植栽されている。四季折々に美しい表情を見せてくれそうだ。
参考情報
本欄の内容は秋留台公園関連ページ共通です
秋留台公園の計画面積は15ヘクタールほどだそうだが、現在はそのうちの12ヘクタールほどが完成している状態という。

交通
電車で来訪する場合はJR五日市線秋川駅で降り、駅北側の五日市街道をまっすぐに東へ辿って1kmほど、徒歩で15分ほどだ。秋川駅の東隣の東秋留駅から西へ歩いてもやはり徒歩で15分ほどだ。

公園には約250台分の無料駐車場があり、車で来訪する場合はこれを利用するといい。駐車場入口は五日市街道に設けられている。

飲食
園内には売店やレストランなどは無く、ドリンク類の自動販売機が設置されている程度だ。公園周辺にもお店は無く、お昼時を公園で過ごそうというときはお弁当持参がお勧めだ。秋川駅周辺にはさまざまな店舗があるから、公園に向かう前に立ち寄っておくのもいい。

園内の「芝生広場」ではバーベキューも可能らしい。用具や食材は持参、使用する際にサービスセンターに申し出ればよいようだ。

周辺
公園の周辺は秋留台地の田園地帯で、畑地の広がる風景だ。周辺を散策してそうした風景を堪能するのも悪くない。

公園西側の「南北道路」を数百メートル北へ辿れば平井川で、河畔に市立の草花公園がある。大きな公園ではないが、河畔の立地が良い風情だ。平井川に沿っての散策も楽しい。

草花公園から1kmほど東へ辿れば、平高橋から多西橋までの約1km、平井川河岸には見事な桜並木が続く。桜の季節なら足を延ばしてみるのがお勧めだ。
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