東京都羽村市の羽村市動物公園は1978年(昭和53年)5月に全国初の町営動物公園(当時は羽村町、1991年に市制が施行されている)として開園したものという。以来、身近な動物園として近隣の人たちに愛されてきた。2018年(平成30年)には40周年を迎え、それに合わせてエントランスや管理事務所のリニューアルが行われた。
羽村市動物公園は4.2haほどの面積を有し、その中に100種ほどの動物が展示されている。身近な動物たちがほとんどで、特に珍しい動物がいるわけではない。ゾウやカバ、サイなどの大型の哺乳類はいない(キリンとシマウマはいる)し、ライオンやトラといった大型の肉食獣もいない。アットホームな雰囲気が魅力で、家族や友人同士で気軽にのんびりと楽しむことのできる動物園だ。
公園の南西側の角にエントランスが設けられている。エントランスは40周年を機会にリニューアルされたものだ。特徴的な形状の屋根は“羽ばたき”をイメージしたものという。
エントランスから園内に入って東へ進めば「エントランスエリア」だ。プレイリードッグやサーバル、シベリアオオヤマネコ、ミーアキャット、シロテナガザル、ワオキツネザル、シマハイエナといった動物たちが展示されている。サーバルやシベリアオオヤマネコの精悍な顔つきが印象的で、シロテナガザルやワオキツネザル、コモンリスザルなどの猿たちの姿が見られるのも楽しい。
「エントランスエリア」を通り抜けると「サバンナ園」だ。区画を区切ってアミメキリンやグラントシマウマに加え、ホオジロカンムリヅルやモモイロペリカンなども展示されている。キリンの姿が少し遠いのが残念だが、大きな身体に関わらず可愛らしい姿に心が和む。
「サバンナ園」とは園路を挟んだ向かい側(北側)に「なかよし動物園」が設けられている。その名から推測できるが、ふれあうことのできる動物たちを展示したエリアで、ヤギやヒツジ、ロバ、カピバラ、インコの仲間などを見ることができる。動物たちとのふれあいのイベントも開催されるようだ。のんびりとしたヤギやロバたちの姿も楽しく、カピバラの愉快な動きも見てきて飽きない。
「サバンナ園」と「なかよし動物園」の間を抜けていくと公園の東端部、「ペンギンエリア」だ。フンボルトペンギンとアメリカビーバー、ケヅメリクガメが展示されている。ペンギンもビーバーも可愛らしい。ビーバーを見ていると、何か自分なりのルーティンがあるのか、同じところを泳ぎ回ったり、2頭が寄り添って休んでいたり、その姿はたいへんに可愛らしく、見ていて飽きない。
「ペンギンエリア」の北側には「サル山」が設けられている。当然のことながらニホンザルが飼育されているわけだが、「サル山」の中にはニホンイノシシも一緒に飼われており、イノシシの背にニホンザルが乗っている姿も見ることができる。サルに背中に乗られてイノシシは嫌ではないのか、と、要らない心配もしてしまうが、イノシシの方はまるでお構いなしのようにも見える。そもそもなぜサルはイノシシの背に乗るのか。ユーモラスな光景だ。
「サル山」の北側は「バードエリア」、その名の通り、さまざまな鳥類が展示されている。アオバズクやメンフクロウ、ワシミミズクなどのフクロウの仲間はその表情が印象的だ。フクロウは「森の賢者」と形容されることもあるが、その達観したような眼差しで見つめられるとこちらの心を見透かされているような気分になるから不思議だ。他にもアンデスコンドルやモモアカノスリといった鳥も展示されているし、鶏の仲間が各種展示されているのも楽しい。
「バードエリア」の西、公園の北側部分を占めるのは「芝生広場エリア」だ。「芝生広場エリア」の東側部分は木立のある一角で、その中にヤクシカやイノシシが飼育されている。ヤクシカの優しい眼差しが印象的だ。
「芝生広場エリア」の西側部分はちょっとした遊園地のように整備されている。遊具が設けられていたり、蒸気機関車が展示されていたり、恐竜やゾウを象ったオブジェ(遊具?)が置かれていたりと盛りだくさんだ。軽食を販売する売店なども設けられているから、子どものいる家族連れには楽しい場所だろう。園内を巡って動物たちを見学した後は、「芝生広場」でのんびりと過ごすのもお勧めだ。
「芝生広場エリア」の南側、エントランスから入ってすぐ北側にはスタディホールという建物が設けられており、その中にナマズやサンショウウオなどが飼育されている。モルモットやレッサーパンダも飼育されていて、モルモットに餌をやりながらふれあうことのできるイベントなども開催されるようだ。さすがにレッサーパンダとのふれあいはできないが、その姿は来園者の人気を集めている。
展示されている動物の数も種類も決して多いとは言えない羽村市動物公園だが、その分、かえって親しみやすく、気構えることなく楽しめるのが魅力だと言っていい。身近な動物たちから、普段の生活の中では見ることのない動物たちまで、その姿を間近に見て回るのは楽しいひとときだ。また園内には通常の動物展示の他に有名な童話をテーマにした展示エリアが設けられている。それらを探しながら巡ってみるのも楽しい。近隣に暮らす人たちには身近な行楽地としてお勧めだ。