東京都檜原村、役場のある村の中心部からそれほど遠くない場所に「払沢の滝」という滝がある。「日本の滝百選」にも選ばれている名瀑で、夏になると涼を求めて訪れる人が少なくない。「払沢の滝」を訪ねた。
「払沢の滝」は檜原村で最もよく知られた観光地だろう。「払沢」は「ほっさわ」と読む。「日本の滝百選」にも選ばれている名瀑で、多くの観光客が訪れる。
滝へと至る遊歩道の入口周辺には数件の飲食店が建ち、いかにも“観光地”的な佇まいだ。そこから案内に従って川沿いの遊歩道を辿ると、のんびりと歩いて十数分で眼前に滝が現れる。
鬱蒼とした木々に覆われた崖に囲まれた滝の姿はなかなか迫力があり、山深さも手伝って幽玄の雰囲気も漂う。滝壺周辺から見上げる滝の姿だけでも充分に見応えのあるものだが、実は「払沢の滝」は四段からなり、滝壺周辺から見えるのはその最も下段の滝らしい。それだけでも落差26メートルあるそうだが、四段合わせると60メートルあるという。そのすべてを見てみたい気もするが、周辺の地形を見てみるとなかなか難しそうだ。
滝近くに設けられた案内板によれば、古くは「払子の滝」と呼ばれていたという。水の流れ落ちる様子が僧侶の用いる「払子(ほっす)」を垂らしたように見えたのでこの名がついたそうだ。滝壺には主の大蛇が棲んでいたそうだが、それも納得できる景観だ。
滝の周辺は真夏でも涼やかな空気に満たされ、ひととき夏の暑さを忘れる。滝壺の岸辺に腰を降ろし、しばらく眼前の滝を眺めて時を過ごすのもいい。滝というのは不思議なもので、ただ崖の上から水が流れ落ちるだけなのに眺めていて飽きることがない。滝壺の横手の崖には途中まで登って行けるようになっており、そこへ上がると少し高みから滝を眺めることができる。見下ろすように眺める滝壺はまた表情が変わって面白い。
滝を流れ落ちた水は滝壺から渓流となって流れてゆく。清らかな流れの涼やかな印象に誘われて足を踏み込みたくなるが、この水は飲料水に使用されているとのことで、“水遊び禁止”の旨の注意書きがある。
「払沢の滝」では毎年8月には「払沢の滝夏まつり」が開催されて賑わう。滝のライトアップも行われて好評だそうだ。また「払沢の滝」は冬になると滝全体が氷結することでも知られる。檜原村観光協会では全体が氷結する日付を当てる「氷瀑クイズ」も実施しているという。夏の涼を求めての観瀑もお勧めだが、氷結して氷の造形と化した滝の姿も一見の価値があるものだろう。
「払沢の滝」への遊歩道入口周辺の飲食店が建つ辺り、道路から北側へと降りてゆく細い石段がある。降りてゆくと小径が続き、北浅川の河岸へと続いている。小径からは河原へと出ることができ、涼やかな北浅川の渓流を間近に楽しむことができる。この辺りはあまり観光客の姿はなく、訪れたときのも地元の人らしい家族連れの姿が一組あっただけだった。観光地的な喧噪からも遠く、辺りには川の流れの水音と蝉時雨が聞こえるばかりだ。「払沢の滝」では川遊びができないから、こちらへ足を延ばして川遊びを楽しむのもいいかもしれない。バーベキューができるほど広い河原はないが、お弁当を広げるスペースなら見つけられそうだ。
本欄の内容は払沢の滝関連ページ共通です
檜原村へ公共の交通機関を利用して訪れる場合、電車とバスを乗り継がなくてはならない。JR青梅線、JR八高線、西武拝島線の拝島駅からJR五日市線へ乗り換え、終点の武蔵五日市駅で下車、武蔵五日市駅前から西東京バスの「払沢の滝入口」行きなどの路線で約30分ほどだ。他の路線でも払沢の滝へ訪れることは可能なので、詳細は武蔵五日市駅前の西東京バス五日市営業所へ問い合わせされたい。
車で来訪する場合は武蔵五日市駅前から都道33号(檜原街道)をひたすら西進すれば檜原村へと着く。武蔵五日市駅前へは都道7号で拝島方面から、あるいは都道32号で八王子方面から、都道31号で日の出町方面からなどのルートがあるが、遠方から訪れる場合は圏央道を利用し、あきる野ICや日の出ICから都道33号(檜原街道)へと入り、西へ向かうとよい。
都道33号(檜原街道)を西進して檜原村へ入り、檜原村役場や檜原郵便局の建つ前を過ぎるとすぐに丁字路がある。丁字路には「橘橋」の名がある。払沢の滝へはこの丁字路を右折だ。「橘橋」丁字路を右折して数百メートルで、「払沢の滝」入口への案内標識を設けて左(西)へ逸れる道がある。この道へ逸れて少し行くと観光客用の駐車場が用意されている。ただ、夏の休日、特にお盆休みの期間などには訪れる人が多く、駐車場がたいへんに混み合う。その期間に訪れる際は余裕を持って出かけた方がいい。
バス停や駐車場のある一角から川沿いの遊歩道を歩いて15分ほどで滝に着く。遊歩道は未舗装の小径なので歩きやすい靴を履いてゆくことをお勧めする。
払沢の滝入口の駐車場近辺に飲食店が数軒建っているが、数は少なく、人出の多いときには長時間待たなくてはならない。檜原村中心部へ戻っても飲食店は少ない。払沢の滝周辺の飲食店が混み合って待っている時間が無い場合は、思い切って払沢の滝から離れることも選択肢に入れておいて方がいいかもしれない。
払沢の滝にはお弁当を広げられるような場所はなさそうだ。北浅川の河原へと足を延ばせば何とかなりそうだが、お弁当持参で訪れるにはあまり適していないように思える。
檜原村にはさまざまな滝が点在しており、“滝巡り”は檜原村観光の定番と言ってもいい。沢伝いの小径を30分以上歩かなくてはならないものもあるが、駐車場から比較的近いものも少なくない。檜原村を訪れた際には“滝巡り”を楽しんでみるのも一興だ。その中のひとつ「吉祥寺の滝」は払沢の滝からも歩いて行ける距離だ。「橘橋」丁字路の南側に渓谷へ降りる階段が設けられている。その他、各滝についての詳細は檜原村観光協会サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)などを参照されたい。
払沢の滝から北西へ数キロ辿ると、北浅川支流の神戸川上流部に「
神戸岩
」と呼ばれる渓谷がある。川の流れが岩盤を抉ってできた峡谷の景観は見応え充分だ。バス利用だと少し歩かなくてはならないが、車ならすぐ近くまで行くことができる。
檜原村から五日市の町まで、都道33号(檜原街道)は秋川に沿っている。秋川渓谷として知られ、景観の美しいところだ。各地に民間のバーベキュー場も点在している。途中で立ち寄って河岸の散策を楽しんでみるのも悪くない。春には
徳雲院
や「
乙津花の里
」を訪ねるのもお勧めだ。
檜原村
檜原村観光協会
晩秋の払沢の滝
神戸岩
乙津花の里
早春の乙津花の里
秋川渓谷 十里木
秋川渓谷 紅葉の石舟橋
梅香る徳雲院