東京都あきる野市の西部、景勝地として知られる秋川渓谷の近くに徳雲院という寺がある。境内地に数多くの梅が植えられており、早春になると見事な景観を見せてくれる。梅が見頃となった三月中旬、徳雲院を訪ねた。
梅香る徳雲院
東京都あきる野市の西端部、山間の川沿いに龍化山徳雲院という寺がある。五日市町史によれば、開山は戸倉の光厳寺二十一世雲英台禅師で、1500年代中頃に開かれたものらしい。境内地内には数多くの梅が植えられており、早春になると美しい景観を見せてくれる。また寺は養沢川河岸の立地で、初夏には蛍も見られるという。そうしたことから「徳雲院周辺」として「あきる野百景」のひとつにも選ばれている。山間に佇む静かな寺である。
梅香る徳雲院
都道33号の「十里木」交差点から都道207号へと逸れ、秋川を渡ってさらに進んでいくと、やがて緩やかな上り坂となった道の左手、養沢川の河岸に徳雲院が見えてくる。早春、徳雲院の境内地は梅の花に覆われ、冬枯れの風景の中にそこだけが一足早い春の色だ。都道から見下ろすこの景色はたいへんに美しく、訪れた際にはぜひ見ておきたいものだ。
梅香る徳雲院
降りていけば庭から駐車場の周辺にも梅が咲き誇り、圧巻の風景を見せる。場所によって梅の咲く風景は表情を変え、飽きることなく楽しめる。早春の青空を背景に梅の花を見上げるのもいい。中には一本の木に白い花と紅い花の付ける「思いのまま」の品種の梅もある。時間をかけてゆっくりと見学させていただこう。
梅香る徳雲院
梅の林はさらに養沢河岸にも広く設けられ、河岸の小径を辿って楽しむのもお勧めだ。養沢川の流れと梅の花との取り合わせが風趣に富んだ風景を見せてくれる。山々に囲まれた谷筋の地形だから、広々とした公園の梅林なとどはまったく違った興趣があって楽しい。養沢川は細い渓流のような川で、せせらぎの音を聞きながらの観梅は心安らぐひとときだ。
梅香る徳雲院
徳雲院では梅の花だけでなく他にもさまざまな早春の花を見ることができる。庭の一角には水仙や沈丁花が植えられ、墓所の脇ではミツマタやサンシュユ、ロウバイなども見ることができる。河岸の小径脇などではホトケノザやヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリといった花々も見つけることができる。梅を楽しみながら、それらの花々も探してみればより楽しむことができるだろう。
梅香る徳雲院
都道207号は交通量は少なく、辺りは静かなものだ。その静かさが何よりの魅力かもしれない。養沢川の流れの音や鳥の声などが響く中、春の訪れを感じながらのんびりと観梅散歩が楽しめる。観梅の名所と言って差し支えない。山間部に位置するからか、梅の開花は市街地より遅い。訪れる際はタイミングを見極めよう。
梅香る徳雲院
梅香る徳雲院
梅香る徳雲院
梅香る徳雲院
梅香る徳雲院
梅香る徳雲院
参考情報
徳雲院の梅林は入場料や拝観料は必要ないが、梅林整備保存のための寄付金を受け付けている。感謝の気持ちを込めてぜひ寄付をしておきたい。

交通
鉄道で訪れる場合は、JR五日市線武蔵五日市駅で下車、武蔵五日市駅からバスを利用しなくてはならない。上養沢行きバスに乗り、「札立」バス停で降りると近い。

車で訪れる場合には圏央道あきる野ICから都道7号を西進、JR武蔵五日市駅前を経由してさらに都道33号を西進するのがわかりやすい。「十里木」交差点で都道207号へと右折すればすぐだ。

徳雲院には参拝客用の駐車場があるが、あまり広くはなく、都道からの出入りの道も狭い。「十里木」交差点近くの都営駐車場に車を駐め、徳雲院まで歩くのをお勧めする。

飲食
「十里木」交差点周辺に飲食店が点在しているが、数は少ない。「瀬音の湯」の食事処を利用するのも一案だ。武蔵五日市駅周辺に移動すれば飲食店も多く、選択肢も増える。

周辺
「十里木」交差点周辺の秋川は「秋川渓谷」として知られる景勝地だ。行楽シーズンには河岸でのバーベキューで賑わうところだ。景観を楽しみながら散策を楽しむのもお勧めだ。

「十里木」交差点から都道33号を少し檜原方面へ辿ると石舟橋という小橋が秋川に架かっている。渡った先は日帰り温泉施設「瀬音の湯」だ。食事処や物産販売所もあり、足湯も楽しめる。

「十里木」交差点から1kmほど檜原方面へ行くと「乙津花の里」と呼ばれるところがある。春にはシダレザクラやミツバツツジが見事なところだ。その季節にぜひ訪ねてみたい。

都道33号をさらに西へ向かえば払沢の滝へも数キロで着く。車で訪れた際には足を延ばしてみるのもお勧めだ。

武蔵五日市駅から西へ2kmほど、五日市の町を抜ける檜原街道は百日紅の並木だ。夏になると鮮やかな色彩で街路を彩る。花の盛りに訪ねてみたい。
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