東京都調布市の神代植物公園はさまざまな樹木の植えられた公園だ。四季折々に美しいが、秋が深まればカエデなどの落葉樹が見事な紅葉に染まる。紅葉が見頃を迎えた十二月初め、神代植物公園を訪ねた。
紅葉の神代植物公園
東京都調布市の神代植物公園はその名の通り、さまざまな草木が植えられた植物公園だ。バラ園が有名だが、四季折々に花々が楽しめて訪れる人は多い。晩秋から初冬にかけて、園内の落葉樹が見事な紅葉に染まる。特に「かえで園」の紅葉は素晴らしく、見頃になると大勢の来園者を迎えて賑わっている。
紅葉の神代植物公園
「かえで園」は深大寺門から入ってすぐ、正門からは東へ向かって奥まったところに位置している。その名の通り、カエデ類の樹木を集めたエリアで、イロハモミジやヤマモミジ、オオモミジなど、さまざまなモミジが植えられている。ちなみに「モミジ」というのはムクロジ科カエデ属の樹木の総称で、植物学的には「カエデ」と同義である(園芸の分野では葉の形状によって「カエデ」と「モミジ」を呼び分けるようである)。
紅葉の神代植物公園
「かえで園」は各種のモミジが植えられた林になっており、晩秋を迎えればそれらのモミジが鮮やかな紅葉に染まって素晴らしい景観を見せてくれる。木々の間を縫うように辿る園路を歩けば、それぞれに美しい景観が眼前に広がる。園路を進むにつれて景観の表情は変わり、飽きることなく楽しむことができる。園路も興趣を削ぐことなくうまく整備されているのが嬉しい。鮮やかなモミジの紅葉を堪能できる「かえで園」である。
紅葉の神代植物公園
「かえで園」のすぐ脇にモミジバフウが植えられた一角がある。モミジバフウはフウ科の樹木で、葉の形状がモミジに似ていることからこの名がある。多摩地域では10月下旬から11月上旬にかけて紅葉するのが一般的だが、神代植物公園では少し遅いようで、12月初旬でもモミジバフウの紅葉を見ることができた。背の高い樹木で、秋空を背景に見上げる景観がたいへんに美しい。
紅葉の神代植物公園
「かえで園」から神代小橋を渡って東へ進めば「うめ園」や「さるすべり・ざくろ園」が設けられたエリアだ。梅も百日紅も花の季節ではないが、シマサルスベリが美しい紅葉に染まっていた。シマサルスベリは沖縄や台湾などに分布する樹木で、一般的な百日紅の近縁種だ。背の高い樹木で、20mくらいに育つ。濃いオレンジ色に染まった葉と白い樹皮が秋空に映えてなかなか美しい。
紅葉の神代植物公園
「ばら園」北側のせせらぎの岸辺にはメタセコイアやラクウショウが並んでいる。ラクウショウもメタセコイアもヒノキ科の落葉針葉樹で、秋になると美しい紅葉に染まる。どちらも背の高い樹木で、見応えのある景観だ。少し離れてみるのも美しいが、根方に立って見上げてみるのも楽しい。
紅葉の神代植物公園
「ばら園」ではまだバラが咲いている。さすがに花数は少ないが、冬の気配も漂い始めた中に咲くバラには独特の興趣が感じられる。丹念に園内を巡って美しい花を見つけて写真に撮るのも楽しいひとときだ。
紅葉の神代植物公園
深大寺門から神代植物公園本園をいったん出て、深大寺の横を通り抜けて東南側へ進むと、神代植物公園の分園として水生植物園が設けられている。水生植物園は無料区域で、自由に入園することができる。水生植物園でも少ないながらモミジの紅葉が楽しめるが、秋の深まった閑寂な田園風景が最大の魅力だろう。
紅葉の神代植物公園
本園の北側に設けられた植物多様性センターにも立ち寄っておきたい。ここも無料区域で自由に入園できる。植物多様性センターは武蔵野ゾーンや奥多摩ゾーン、伊豆諸島ゾーンに分けられ、それぞれの植生が再現されている。園内ではイチョウやススキ、ハウチワカエデなどが秋の風情を漂わせて美しい景観を見せてくれる。
紅葉の神代植物公園
神代植物公園にはさまざまな樹木があり、それぞれに晩秋の表情を見せてくれる。コナラやイヌシデ、ムクロジなどの樹木も美しい紅葉に染まっているし、ナンテンの紅い実も季節の風情だ。「芝生広場」のパンパスグラスも美しい。「さくら園」では十月桜や子福桜が花を咲かせている。園内をゆっくりと巡りながら、この季節ならではの景観を楽しむのがお勧めだ。“紅葉の名所”と呼ぶにとどまらない、晩秋の散策路としてとても魅力あるところだ。
紅葉の神代植物公園
紅葉の神代植物公園
紅葉の神代植物公園
紅葉の神代植物公園
紅葉の神代植物公園
参考情報
本欄の内容は神代植物公園関連ページ共通です
神代植物公園は入園料が必要だ。また無料区域の「自由広場」と「ドッグラン」以外の区域への「動物を連れての入園はご遠慮ください」とのことだ。入園料や開園時間、休園日など、詳細については東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
神代植物公園は電車の駅からは離れており、駅からバスを利用しなくてはならない。京王線調布駅、京王線つつじヶ丘駅、JR中央線三鷹駅、JR中央線吉祥寺駅などから神代植物公園行き、あるいは神代植物公園を経由するバス路線がある。詳細は東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

車で来訪する場合は、国道20号の「下石原交番前」交差点から「武蔵境通り」へ折れて北上、あるいは東八道路(都道14号)の「野崎八幡前」交差点で「武蔵境通り」へ折れて南下するのがわかりやすいだろう。中央自動車道を利用するときには調布ICで国道20号の上り方向へと降りれば300mほどで「下石原交番前」交差点だ。

「武蔵境通り」の「神代植物公園北」交差点から東へ折れれば公園駐車場がある。駐車場は有料で、西側に第一駐車場(約220台分)が、東側に第二駐車場(約100台分)が設けられている。バラの季節など、来園者の多い行楽シーズンには臨時駐車場が開放され、全部で1000台分近い駐車スペースがあるが、それでもたいへんに混み合う。公園側でも公共の交通機関の利用を呼びかけている。

飲食
公園には正門脇にレストランがある。レストランのメニューはカレーライスやチャーハン、焼きそば、うどんといった軽食が中心だが、ケーキやあんみつなどの甘味も扱っている。手軽に食事を済ませたいときには便利だろう。また「芝生広場」脇の売店でもカレーライスや焼きそば、おにぎりなどの軽食を販売している。もちろんお弁当持参で「芝生広場」にレジャーシートを広げてのアウトドアランチを楽しむのもお勧めだ。

公園南側の「深大寺門」から出れば、深大寺周辺に有名な「深大寺そば」を商う店が多数ある。行楽シーズンにはたいへんに混み合うが、「深大寺そば」を味わってみるのもいい。

周辺
公園の南側には深大寺がある。ぜひ参拝しておきたい。周辺には蕎麦店などが建ち並び、なかなか興趣に富んだ風景が広がる。のんびりと散策を楽しむのがお勧めだ。

さらに南へ下れば野川が流れている。野川の河岸に沿っての散策もお勧めだ。公園の西へ向かえば国立天文台がある。少し距離があるが、散策の足を延ばしてみるのも楽しい。
紅葉散歩
東京多摩散歩