内海駅を出て南に向かう日南線は、しばらく国道220号と並んで海岸を走る。車窓からは海が見え、引き潮の時刻であれば海岸に広く姿を現す「鬼の洗濯板」の姿も見ることができる。やがて海岸を離れて
野島の集落の傍らを過ぎ、短いトンネルを抜けて再び海岸に出ると同時に小さな駅に到着する。小内海の駅だ。
内海と同様に入江を成し、しかし内海ほど大きな規模のものではないという地形の特徴を、「小内海」というその名が示している。
この辺りでは日南線の線路は山肌に張り付くように海岸を辿っているが、その途中に辛うじて狭いホームを設置して小内海の駅は設けられている。小内海駅は2021年(令和3年)9月の台風14号によって壊滅的な被害を受けた。駅北側の斜面が幅約100m、高さ約70mに渡って崩落、土砂は線路と駅を飲み込み、併走する国道220号を塞いだ。日南線は青島ー志布志間が運休となり、南宮崎ー青島間は減便での運行を強いられた。日南線の全線運行が再開するのは約5ヶ月後の12月11日のことである。
台風被害の爪痕は今も生々しく残っている。駅機能は回復しているが、背後の斜面の対策工事は今も続いているようだ。真新しいホームには駅名標が設置されているだけで、ベンチなどはない。国道からホームに上がる階段は仮設のものか。すべての復旧工事が完了するのはまだ先のようだ。
狭いホームからは、海がよく見える。左手には巾着島の姿が見えている。南側に見える岬は「
いるか岬」で、宮崎市と日南市との市境にあたる。小内海の駅は日南線に於ける宮崎市の最南端の駅でもある。ホームのすぐ下、国道脇には炭火焼きと磯料理の店が建っており、観光シーズンになると多くの観光客で賑わっている。この店も土砂崩落の際に被害を受けたが、今はリニューアルされている。
近くには特に観光名所として知られる場所はないが、
野島地区のアコウの古木などは有名かもしれない。小内海の駅から南に向かう日南線は、再び海岸を離れ、いくつかのトンネルをくぐって
鶯巣の入江の横へと抜け出て、すぐに
伊比井の駅へ到着する。