横浜市緑区寺山町
−四季の森公園−
紅葉に染まる四季の森公園
Visited in December 2012
その大部分を雑木林の里山が占める
四季の森公園は晩秋の風景もまた美しい。晩秋の雑木林というのは新緑の季節に次ぐ味わいがあるのではないかと思えるが、低い角度で差す日差しの中での四季の森公園の散策はそうした味わいを存分に楽しむことができる。「紅葉の森」をはじめとして園内にはモミジの木も少なくなく、それらを楽しみながらの散策は心安らぐひとときだ。
「北口広場」から園内に入れば、目の前には池が横たわっている。その池の西側の雑木林が紅葉に染まっている。日射しを浴び、真っ青な初冬の空を背景にした景観がとても美しい。クヌギやコナラを中心にした雑木林の紅葉は鮮やかさという点ではモミジの紅葉に劣るが、素朴な美しさがあって味わい深い秋景色を見せてくれる。その真下を辿る遊歩道を歩くこともできるが、景観を楽しむなら、やはり池を挟んで対岸から眺めるのがいい。水辺の風情と雑木林の秋の色彩とが相俟って風趣に富んだ風景だ。
池の岸辺の遊歩道を辿ってゆくと、池の南側には「春の草原」と名付けられた広場がある。その広場の隅に印象的に一本のモミジが立っている。このモミジがたいへんに美しい。池側から眺めれば逆光になって、紅葉に染まった樹形が透過光に輝く。間近から眺めるのもいいが、少し離れて里山風景の中に見る姿もたいへんに美しい。見る場所によって表情が変わり、あちらこちらから眺めてみたくなる。そのモミジの下にシートを広げて、秋の公園でのひとときを楽しむ家族連れの姿があった。なかなかフォトジェニックな光景だ。
「春の草原」から南東側に向けて「しょうぶ園」の設けられた谷戸が伸びている。その谷戸の入口付近、谷戸の北側の雑木林のクヌギやコナラが午後の日射しを浴びて輝き、驚くほどの美しさを見せてくれていた。「しょうぶ園」は南側の丘の陰となって薄暗く、その横に日射しを浴びてクヌギやコナラの紅葉が鮮やかに浮かび上がっている。素晴らしい景観だった。すべての紅葉がそうだが、特にクヌギやコナラは日射しの当たり方によって表情が大きく違う。この時は最も美しい姿を見せてくれる時刻だったかもしれない。
「しょうぶ園」の横を通り抜けて谷戸の奥に進むと「紅葉の森」と名付けれた一角だ。その名のようにモミジが多く植栽されているのだが、残念ながら訪れた時には「紅葉の森」のモミジはあまり鮮やかな色に染まってはいなかった。地形によるものか、「紅葉の森」の紅葉はいつも遅く、公園内では最も遅い時期まで紅葉を見ることのできる場所であるらしい。それでも濃いオレンジから朱色に染まったモミジも少なくはなく、日射しを受けて薄暗い谷戸の中に浮かび上がり、この季節ならではの美しい景観を見せてくれていた。
「春の草原」から南西側に延びる谷戸は「あし原湿原」だ。その名のように葦が茂る湿原になっているのだが、もちろんこの季節にはすでに冬枯れの風景だ。その「あし原湿原」の北側の岸辺で、一本のモミジが鮮やかな紅葉に染まっている。このモミジの周辺には常緑樹が少なくないようで、冬枯れの湿原と緑の林に包まれるようにして紅葉のモミジがひときわ目立っている。少し離れて見るのも味わい深いが、間近から見ると鮮やかさが際立ち、たいへんに美しい。逆光に染まる姿はもちろん美しいが、順光気味に日射しを照り返す様子も見事なものだった。
「あし原湿原」の奥からさらに南側に谷戸が伸びている。辿ってゆけば「ピクニック広場」や「不動の滝」へと至るのだが、その遊歩道脇の沢に見事な紅葉を見せるモミジが並ぶ。このモミジはオオモミジらしい。日当たりの良くない谷間で、ところどころに射す日射しを浴びて真紅のオオモミジが浮かび上がる。沢の岸辺に立つオオモミジは残念ながら遊歩道からは少し距離があり、間近に見ることができず、写真を撮るにも望遠系のレンズが必要だ。しかし、このオオモミジの真紅の紅葉は見事なもので、公園でも「最もお薦めのスポット」としているようだ。
「ピクニック広場」の奥では四阿の傍らに大きく枝を張ったモミジの木があった。残念ながらまだ紅く染まっておらず、全体的に黄色い状態だったが、うまく日射しを浴び、日陰になった丘の斜面を背景に見事に浮かび上がっている。モミジだけでも充分に美しいが、四阿と共に視界に収まる風景も興趣のあるものだ。少し離れて眺めたり、真下に立って見上げたり、さまざまな表情を楽しめるのも嬉しい。もっと季節が深まれば、このモミジも紅く染まってくれるのだろうか。真っ赤に染まった姿はきっと素晴らしい景観を見せてくれるに違いない。
「北口広場」から東側の園路を辿って「南口広場」へ向かう途中、「じゃぶじゃぶ池」横辺りも紅葉の美しいところだ。特に園路東側に植えられたモミジが陽光を受けて輝く様子が素晴らしい。数はそれほど多くはないが、園路を覆うように大きく枝を張ったモミジが数本、オレンジ色のものもあれば、真っ赤に染まったものもある。そこへ常緑樹の緑が加わり、青空を背景に見れば色彩のコントラストが鮮やかだ。「じゃぶじゃぶ池」北側の沢の周辺にもモミジの木があるが、こちらはまだ色付きが浅かった。これももう少し日が経てば鮮やかな色になるに違いない。
紅葉の時期の四季の森公園は、真っ赤に染まったモミジが見せてくれる景観と素朴な風情の里山の秋の風景の双方を楽しめるところだ。長閑な里山風景の中、深まってゆく季節の空気を感じながらの散策はとても楽しい。辺り一面が錦秋に染まるような景観ではないが、この季節の風情を存分に感じられるという点で「紅葉の名所」と言っても差し支えないだろう。
四季の森公園内には上記に挙げたところ以外にも紅葉を楽しめる場所がある。今回訪れたとき(2012年)、管理事務所には公園内の紅葉の“見どころスポット”を紹介したマップが掲示されていた。初めての人は参考にするといい。