多摩市唐木田
唐木田の街
Visited in May 2000
多摩市の西端、八王子市と町田市に接して唐木田の街がある。ほぼ中央を尾根幹線の広い道路が東西に抜け、その南側には多摩ニュータウン清掃工場や大妻女子大、大手企業の研修センターなどが並ぶが、北側は整然とした住宅街だ。多摩ニュータウンの中でも比較的若い唐木田の街を歩いてみた。
唐木田と言えば小田急多摩線の唐木田駅の名を思い浮かべる人も多いと思うが、地図の上で見ると駅は実際には唐木田の北側の中沢に位置しており、その改札口が唐木田の街に向かって開いている。駅は現在(2000年5月)のところはターミナルで、その印象からか、唐木田は多摩ニュータウンの最も奥まったところという印象もなくはない。
駅を出て東に向かうと広いバス通りを越えてその向こうには鶴牧の街が広がっており、鶴牧西公園にも近い。駅の西には唐木田の住宅街があるが、尾根幹線と北側に広がるゴルフコースとに挟まれてこぢんまりとした雰囲気も感じる。尾根幹線の南には大妻女子大、短大などの校舎があり、そこの学生が唐木田駅を利用することもあってか、駅からの通学路にあたる道路沿いにはちょっとお洒落な喫茶店などもあったりする。
唐木田の住宅街の北にはゴルフコースの広大な敷地が八王子市と多摩市の市境を跨いで広がっており、その外郭に沿って中沢から唐木田一丁目にかけて「からきだの道」という遊歩道がある。ゴルフコースの外郭に辿るように造られた「からきだの道」はかつて造成前のこのあたりの様子を今に伝えようという主旨のものなのだろう。
唐木田の住宅街の北にはゴルフコースの広大な敷地が八王子市と多摩市の市境を跨いで広がっており、その外郭に沿って中沢から唐木田一丁目にかけて「からきだの道」という遊歩道がある。ゴルフコースの外郭に辿るように造られた「からきだの道」はかつて造成前のこのあたりの様子を今に伝えようという主旨のものなのだろう。
神社の敷地内の片隅にひっそりと記念碑が立っている。かつての唐木田は二十数戸の民家が点在するだけの、山並みに囲まれた静かな農村であったが、多摩ニュータウンの造成によって地形は一変した、との旨の文章が書かれてあり、当地の発展と開発の波に埋没した先祖の霊の供養のためにこの碑を建立した、とある。ほんの短い碑文だが、この文章が秀逸である。大規模開発の弊害を責めるでもなく、失った古来の風景を懐かしむでもなく、嘆くでもなく、事実が言葉少なにただ淡々と綴られているだけなのだが、事実の重みというのか、何故か胸を打つものがある。それはまるで一編の詩のようでもある。
「からきだの道」の途中にもさまざまな古来の地名の由来などを記した案内板もあり、かつての風景を想像しながらの散策も楽しい。唐木田駅前の広場の脇に立てられた街の案内図の裏には唐木田の歴史や昔の地名の由来などが記されており、これも興味深いものだ。
市境を跨いで広がるゴルフコースのために多摩市側と八王子市側とに分断されている観のある多摩ニュータウンだが、唐木田の街はその両者を繋ぐ位置にある。隣接する八王子市別所の街の開発の進行とともに唐木田の街の様相も少しずつ変わってゆくのかもしれない。唐木田の街の南には今なお自然をよく残す町田市上小山田町が隣接し、唐木田の街からもその緑濃い雑木林の丘陵が見える。かつてはこの唐木田もあの丘陵の連なりの一部であったのかと、ふと思ったりもする。