東京都千代田区外神田に鎮座する神田明神は天平二年の創建という古社だ。江戸の総鎮守として人々の信仰を集めてきた神社だが、春の桜の名所としても名高い。桜が満開の四月初め、神田明神に参拝した。
春の神田明神
東京都千代田区外神田に鎮座する神田明神(正式には名を「神田神社」という)は、天平二年(730年)に創建されたという古社だ。江戸時代には徳川幕府の庇護を受け、江戸総鎮守として人々の信仰を集めてきた。壮麗な本殿や隨神門が見事な神社だが、春になれば桜が彩りを添えて美しい景観を見せる。
春の神田明神
神田明神の桜は意外に数は少なく、境内全域が桜で覆われるような景観になるわけではない。随神門横や手水舎横、本殿向かって右手など、数えるほどの桜しかない。しかし、特に随神門横や手水舎横の桜は大きく育って枝振りも見事で、随神門や本殿の朱色との組み合わせが風情に富んだ景観を見せてくれる。
春の神田明神
春の神田明神
随神門の西側、手水舎の裏手には駐車場が設けられているが、その屋上部分は「屋上庭園」として整備され、訪れた人たちの憩いの場として親しまれている。この屋上庭園の桜も見事だ。桜はそれほどの大木というわけではないが、庭園の外縁部を取り囲むように並んで周囲のビルの姿を隠し、春爛漫の景色を演出してくれる。庭園内から東を向けば随神門横の桜や手水舎横の桜が間近に見え、庭園全体が桜に囲まれた印象だ。庭園内にはユキヤナギも咲き、春の訪れを存分に堪能することができる。
春の神田明神
屋上庭園を西側へ降りると神田明神に隣接する宮本公園だ。宮本公園も桜が素晴らしい。宮本公園は小さな公園だが、その園内を桜が染め上げている印象だ。公園内の桜の下ではお花見を兼ねたランチタイムを楽しむ人たちの姿があった。今回訪れたのは平日、近隣で働く人たちがお昼休みを利用して訪れたらしい様子も少なくない。
春の神田明神
神田明神は都内の“桜の名所”のひとつに名を連ねているが、境内から屋上庭園、宮本公園までのすべてをまとめて、ひとつの“名所”として認識されているのだろう。神田明神境内で見る社寺建築と桜との取り合わせの妙、桜に囲まれるような屋上庭園の景観、のんびりとした春の空間を演出する宮本公園と、それぞれに魅力があって素敵な春散歩が楽しめる。近隣に暮らす人たち、近隣で働く人たちにとって、そしてもちろん遠方から訪れても充分に桜の咲く景観を楽しめる“名所”と言っていい。
春の神田明神
春の神田明神
参考情報
本欄の内容は神田明神関連ページ共通です
交通
神田明神へ訪ねるならJR中央線御茶ノ水駅や東京都メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅、東京メトロ銀座線末広町駅などが近い。東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅やJR線(山手線や総武線など)の秋葉原駅からでも充分に歩ける距離だ。

駐車場は御茶ノ水駅周辺から東方の秋葉原駅周辺にかけて民間のものが点在しているが、小規模のものがほとんどのようだ。車での来訪はあまりお薦めしない。

飲食
神田明神の近くには飲食店があまり多くないようだが、御茶ノ水駅周辺から東方の秋葉原駅周辺にかけて数多く点在している。御茶ノ水駅南側辺りで好みの店を探してみるのがお薦めかもしれない。

周辺
神田明神の西側に隣接する宮本公園内には「神田の家(遠藤家旧店舗・住宅主屋)」が建っている。江戸時代から材木商を営んできた遠藤家が、昭和初期に建てた店舗兼住宅で、なかなか見事な建物だ。神田明神の境内からそのまま入って行ける。ぜひ立ち寄っておきたい。神田明神のすぐ南側には湯島聖堂が建っている。湯島聖堂から聖橋を渡ってさらに少し南へ向かえばニコライ堂がある。併せて訪ねてみるのがお薦めだ。

神田明神から北へ数百メートル辿れば湯島天神、さらにその北側には春日通りを挟んで旧岩崎邸庭園、その北東側には上野恩賜公園が広がっている。神田明神から西へ向かえばやはり数百メートルで東京都水道歴史館と本郷給水所公苑がある。本郷給水所公苑は初夏のバラが美しい。そこからさらに本郷の町へ足を延ばしてみるのも楽しい。東へ数百メートル歩けば秋葉原の繁華街が近い。神田明神への参拝を済ませた後は周辺の散策を楽しみたい。
桜散歩
東京23区散歩