彼岸花は寺社の境内や田園風景によく似合う花だが、旧芝離宮恩賜庭園のような日本庭園にもなかなか似合う。こうした日本庭園を背景にして彼岸花を見るのはなかなか良い風情のあるものだ。そしてまた、視点を変えて“彼岸花の咲く庭園”の風景として見ても、彼岸花の色彩を得た旧芝離宮恩賜庭園はたいへんに美しい表情を見せる。庭園内を巡っていると、場所や見る角度によっても印象が変わって飽きることがない。池の西側、端正に整えられた松の木や丸く刈り込まれたツツジに混じって咲く様子がやはり魅力的だ。松やツツジとともに彼岸花が視界に収まる様子もよく、あるいは腰をかがめて視点を下げ、彼岸花の向こうに泉水と岸辺の織り成す風景を見るのもいい。その醸し出す風情ということで言えば、彼岸花の咲く旧芝離宮恩賜庭園は“彼岸花の名所”と呼んでもいいかもしれない。