東京都調布市の野川公園の「自然観察園」で、春の訪れが近づく頃になるとロウバイやセツブンソウの花を見ることができる。冬の寒さが続く一月下旬、野川公園を訪ねた。
晩冬の野川公園
野川公園は国際基督教大学のゴルフコースだったところを活用した、緑豊かで広大な公園だ。公園内には野川が流れ、その左岸部(北側)は国分寺崖線からの湧水による湿地になっており、「自然観察園」としてその自然が保護されている。「自然観察園」では四季折々にさまざまな植物を見ることができるが、冬も終わりに近づく頃、ロウバイやセツブンソウの花を見ることができる。
晩冬の野川公園
一月の下旬、冬の寒さが続き、野川公園も冬枯れの風景だ。「自然観察園」内の池は葉の落ちた樹木のシルエットを映し、他の季節にはない風情を感じさせてくれる。その「自然観察園」の東側の一角、遊歩道脇にロウバイの木があり、春の訪れに先がけて花を咲かせて濃密な香りを漂わせている。
晩冬の野川公園
晩冬の野川公園
東八道路南側にもロウバイが植栽されたところがあるのだが、残念ながら今回訪れたときにはすでに花の盛りを過ぎてしまっており、「自然観察園」内のロウバイだけが花を咲かせていた。

ロウバイはクスノキ目に属する落葉広葉低木で、1月から2月にかけて、すなわち晩冬から早春にかけて、黄色い花を咲かせる。ロウバイは「蝋梅」と書くが、梅の仲間ではない(ウメはバラ科サクラ属、ロウバイはロウバイ科ロウバイ属)。あまり目立つ花ではないが、冬枯れの風景の中で存在感を放っている。ロウバイの花は香りが強く、近づくだけでその香りが漂ってくる。その香りが、冬の終わりが近づいていることを知らせてくれているようでもある。
晩冬の野川公園
「自然観察園」の北側の崖下近く、セツブンソウを見られる一角があった。セツブンソウはキンポウゲ科の植物で、立春、すなわち節分の頃に花を咲かせることからその名で呼ばれるようになったものという。セツブンソウは小さな可憐な花だ。落ち葉の隙間から細い茎を伸ばし、その先に白い小さな花を咲かせる。白い花弁に見えるのは、実はガクだそうだ。セツブンソウは自然破壊や乱獲によって数が減っているという。この可憐な花が失われないように願う。
晩冬の野川公園
一月下旬、まだまだ寒さは厳しく、公園を散策するのに好適な時期だとは言い難い。その中で春の訪れを待ちきれないように咲き始める花々を探してみるのもなかなか楽しい。冬枯れの風景もまた、それはそれで季節の興趣として愉しみたい。
参考情報
本欄の内容は野川公園関連ページ共通です
交通
電車でのアクセスであれば、西武多摩川線の新小金井駅や多磨駅が最寄りということになるが、どちらも公園までは徒歩で十五分ほどはかかるだろう。バスであればJR中央線の武蔵小金井駅や三鷹駅、あるいは京王線の調布駅からのバス路線を利用するといい。

駐車場は有料で200台分を越えるスペースで用意されているが、公園の規模から考えれば行楽シーズンの休日にはとても足りないだろう。駐車場は人見街道側にあるが、東八道路の交差点にも案内標識があり、比較的分かり易い。

飲食
管理所横に売店があり、カレーや焼きそば、うどん、たこやきなどの軽食とドリンク類を販売しているが、他に本格的なレストランは無い。公園の性格から言ってもお弁当を持参して、木陰にシートを広げてのランチタイムがお勧めだ。

公園南側を通る人見街道の公園入口近くに蕎麦屋とコンビニエンスストアがあるが、他には公園周辺にお店は無い。公園に向かう途中でおにぎりなどを調達しようという場合は公園に近づく前に立ち寄っておいた方がいい。

バーベキュー場の利用は無料だが予約が必要とのことだ。利用時間や問合先などについては西武・武蔵野パートナーズによる公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

周辺
野川の上流部、西側には都立武蔵野公園が隣接しており、野川河岸の遊歩道を辿って行けば道路を一本横切るだけで武蔵野公園へと入って行ける。武蔵野公園も緑に溢れた公園で、特に野川河岸の散策が楽しい。また春の桜の時期秋の紅葉の時期の武蔵野公園はたいへんに美しい。ぜひ散策の足を延ばしたい。

野川を下流側へ辿れば「大沢の里」と呼ばれる一角があり、昔ながらの水田の広がる風景や古民家などが残されている。時間が許せば野川の河岸を辿って散策を楽しみたいところだ。

野川公園から南へ、人見街道を越えて少し辿れば都立武蔵野の森公園だ。調布飛行場に隣接した、開放感溢れる公園だ。ここもぜひ訪ねておきたい。
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