公園の東側、西武多摩川線が頭上を越える辺りで、野川の河岸に彼岸花を見ることができる。群生している様子はなく、ぽつりぽつりと花を咲かせている。彼岸花は群生して咲いている景観が見事なものだが、このように僅かな数で景観を彩る様子もなかなか良い風情がある。野川の河岸を東側から西側へと辿ってゆくとハナミズキの並木になっている。ハナミズキは真っ赤な実を枝々につけている。赤い実と初秋の青空とのコントラストが美しい。
野川河岸をさらに西へ辿り、左岸に「野川第二調節池」、右岸には原っぱのある辺りへ来ると、河岸にコスモスが咲いている。コスモスも決して数は多くはないが、風に揺れるコスモスの姿はやはりこの季節の象徴のような風景だという気がする。
2011年10月、本頁をご覧になった小金井在住の方からメールで情報をお寄せいただいた。それによれば、野川河岸のコスモスはメールを下さった方が公園の許可を得て個人のボランティアで育成されてきたものという。「今年が11年目」ということなので2000年頃から行っておられるのだろう。個人のボランティアということに少しばかり驚き、頭が下がる思いがする。散策を楽しむときには、こうして人知れず尽力されている方がいるのだということにも気持ちを向けておきたい。情報をお寄せいただいた氏にこの場を借りて御礼を申し上げたい。
「苗圃」の中を歩いてみると、遊歩道脇にぽつりと咲いている彼岸花に出会った。緑濃い「苗圃」の中で見る彼岸花も美しいが、「苗圃」の中に他にはあまり彼岸花の姿はないようだった。
九月も下旬になれば夏の暑さもすっかりひいて散策や行楽に良い季節だ。野川河岸の「原っぱ」の中にある「くじら山」では子どもたちの遊ぶ姿があった。彼岸花やコスモスの姿を見ることができるとは言っても、武蔵野公園はそれらの「名所」と呼べるほどの規模ではない。そのためにかえって訪れる人の姿も少なく、喧噪感を感じることもない。のんびりと穏やかな気分で初秋の散策を楽しむことができる。