東京都北区西ヶ原の旧古河庭園は洋風庭園と日本庭園とを併せ持つ庭園だ。早春には日本庭園で梅が咲き、松に施された雪吊りも良い風情だ。梅の咲く二月下旬、旧古河庭園を訪ねた。
旧古河庭園はかつて古河財閥の邸宅だったところを庭園として整備し、一般に開放しているものだ。敷地内には洋風庭園と日本庭園とがあり、洋風庭園はバラの名所として知られ、初夏には多くの観光客を集めて賑わう。美しい庭園は四季を通じて魅力のあるものだが、早春には日本庭園の一角に梅が咲き、散策の目を楽しませてくれる。
旧古河庭園の梅は日本庭園の奥、心字池の南西側の一角に植えられている。数はそれほど多くはない。白梅と紅梅、合わせて十数本といったところだろうか。“梅林”と言えなくはないが、“梅の名所”とは言い難いだろう。この季節にも観光客の姿はあるが、梅を目当てに訪れる人はあまりいないように思える。規模は小さいながらも、紅白の梅は閑寂な空気を湛えた早春の庭園に彩りを添えてなかなか良い風情だ。静かに梅の花を楽しみたい人には賑やかな“名所”より魅力的かもしれない。“梅林”横の広場の一角にはベンチも設置されているから、腰を降ろして早い春の訪れを感じながら一休みするのもよいものだ。
旧古河庭園は常緑樹も多く、この季節にも緑濃い様相だ。心字池の周囲を巡る散策路を辿ると、岸辺に植えられた松に施された“雪吊り”が美しい。池を横切る鴨の姿にも心が和む。梅を目当てに訪れるには少し物足りないが、美しい庭園の早春の姿を楽しみながらのんびりと園内を散策するのがお薦めと言えるだろう。
本欄の内容は旧古河庭園関連ページ共通です
旧古河庭園は入園料が必要だ。またペット連れの入園はできない。その他の注意事項、入園料金や開園時間については東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
また園内に建つ洋館は財団法人大谷美術館による管理が行われており、館内の見学には原則として往復葉書による事前申し込みが必要だ。2008年5月に訪れたときはバラの最盛期で来園者が多いことを考慮してか、当日受付の見学が可能なようだったが、例外的な措置なのだろう。
旧古河庭園へはJR京浜東北線上中里駅や東京メトロ南北線西ヶ原駅、JR山手線駒込駅などが近い。JR京浜東北線上中里駅や東京メトロ南北線西ヶ原駅からなら徒歩で10分足らず、JR山手線駒込駅からでも本郷通りを歩いて15分ほどだ。庭園の駐車場は無く、民間の駐車場も付近には少ない。電車での来訪が便利だ。
園内にはお菓子やドリンク類を扱う売店があるのみで、レストランは無い。洋館一階には喫茶コーナーがあるが、メニューはドリンク類とケーキなどに限られ、食事はできない。園内にお弁当を持ち込むのはかまわないようだが、シートを敷くのは不可とのことで、ベンチを利用しなくてはならない。日本庭園西側の広場などにベンチが設けられているから、木々に包まれてのんびりとお弁当を広げるのもよいかもしれない。
旧古河庭園前の本郷通り沿いにはあまり飲食店が見当たらないようだが、道を挟んで向かいに建つ「滝の川会館」の地下にレストランがある。上中里駅周辺にもあまり飲食店はないが、駒込駅付近にはさまざまな飲食店がある。
旧古河庭園のすぐ南側には
霜降銀座商店街
がある。西へ辿ってゆくと染井銀座商店街へとつながっている。どちらも下町風情溢れる商店街だ。町散歩の好きな人は足を伸ばしてみるといい。
旧古河庭園から本郷通りを南へ20分ほど歩くと
六義園
だ。併せて訪ねてみるのがお薦めだ。旧古河庭園と六義園との双方に入園できる「園結びチケット」を購入すれば入園料が割安になる。
本郷通りを北へ歩くと数分で滝野川公園、15分ほど歩けば飛鳥山公園に着く。
飛鳥山公園
は歴史の古い公園で、明治期には実業家渋沢栄一が邸宅を構え、貴重な建物が一部残っている。さらに飛鳥山公園の周辺の
音無親水公園
や
赤レンガ酒造工場
に立ち寄ってみるのも楽しい。飛鳥山公園も音無親水公園も桜の名所だ。桜の季節にはぜひ訪ねてみたい。桜の季節であれば、さらに
石神井川河岸の桜並木
へと散策の足を延ばすのもお勧めだ。
旧古河庭園(東京都公園協会)
旧古河庭園
桜咲く旧古河庭園
紅葉の旧古河庭園
霜降銀座と染井銀座
六義園
紫陽花の咲く六義園
紅葉の六義園
飛鳥山公園
桜咲く飛鳥山公園
紅葉の飛鳥山公園
音無親水公園
桜咲く音無親水公園
赤レンガ酒造工場
石神井川桜並木