町田市小山ヶ丘〜八王子市南大沢〜鑓水
小山内裏公園
Visited in September 2006
京王相模原線多摩境駅の北側の丘の上に小山内裏(おやまだいり)公園という都立の公園がある。公園のある丘は町田市と八王子市の市境の尾根筋に当たっており、公園は町田市小山ヶ丘四丁目から北側の一部では八王子市に跨って広がっている。園内には里山の雑木林が広く残るものの「サンクチュアリ(動植物保護区域)」として立ち入りが制限されている部分も少なくなく、里山の自然の保全が優先された公園のようだ。尾根道を中心にして随所に広場などが設けられおり、尾根道の爽快感を味わいながらの散策が楽しい。
公園の中心、あるいはメインエントランスと言える部分は、公園中央部北側に設けられている。大きく公園名を記した入口があり、その傍らに管理所を兼ねた「パークセンター」が置かれている。「パークセンター」前の道路には京王バスの「南大沢五丁目循環」などの路線が通っており、「南大沢学園前」バス停が公園入口横手に設けられている。公園そのものの大部分は町田市小山ヶ丘四丁目に位置し(「パークセンター」自体も住所の上では町田市小山ヶ丘四丁目だ)、公園へのアクセスも多摩境駅が至近であるのだが、公園のエントランスは八王子市南大沢の街に向かって開かれている印象がある。
管理事務所を兼ねた「パークセンター」は公園で行われる各種イベントの拠点にもなる施設で、さまざまな講習会なども行われているという。館内は自由に利用することができ、来園者のための休憩所としても機能している。イベント情報などのインフォメーションの他、館内には公園内で見られる動植物の写真パネルや蝶の標本なども展示されている。来園時には立ち寄っておきたい。公園のリーフレットも用意されているから、これを貰っておくとよいだろう。室内からは窓外にセンター裏手の「里山広場」の風景を見ることができ、緑濃い景色を眺めながら一休みするのも悪くない。入口脇にドリンク類の自販機が置かれているのも嬉しい。
「パークセンター」の裏手、南側に「里山広場」と名付けられた広場がある。中央部がわずかに盛り上がった草はらに木々が植栽されて広場を成している。植栽された木々はまだ小さいが、やがて大きく育てばまた広場の表情も変わるだろう。バス通りにも近いが三方を緑の尾根に囲まれた広場は街の喧噪から離れて静かで落ち着いた佇まいだ。陽気の良い季節の休日に木陰にシートを広げてのんびりと過ごすのに良い場所だろう。「里山広場」の奧に尾根道へと上る小径があり、そこから尾根道散策へと歩を進めるといい。「里山広場」と「パークセンター」の東側にフェンスに囲まれて「バーベキュー広場」がある。名の通り、バーベキューを楽しむための一角で、バーベキュー用の「かまど」などが設置されている。年末年始以外はいつでも利用することができるようだが、利用するためには事前の申し込みが必要で、先着順とのことだ。
現在の大田川は源流部は暗渠となり、南大沢駅の北東側から地上を流れている。そこから多摩ニュータウン通りの北側を通りに沿うように南大沢一丁目の南端部を流れ、京王相模原線堀之内駅の北方で大栗川に合流、大栗川はさらに北東へ流れて多摩市関戸付近で乞田川と合流してすぐに多摩川に注ぐ。すなわち「大田切谷戸」は多摩川の水系に位置しているわけだが、尾根の向こうの南側は境川の水系であるわけで、公園の中心となっている尾根は両水系の分水嶺だということになる。そのようなことを考えながら尾根道を歩くのも楽しい。
「水辺の広場」から北東側へ、バス通りを美しいアーチの橋でくぐって舗道が南大沢五丁目の街へと延びている。緑濃い歩道は南大沢緑地や南大沢うずまき公園などの小公園を繋いで辿り、美しい街並みの「ベルコリーヌ南大沢」を抜けて南大沢駅方面へと繋いでいる。散策の足を延ばしてみるのも悪くない。
「水辺の広場」の西側には駐車場が設けられている。23台分の駐車スペースがあるということだが、やはり少ない。駐車場の傍らの「芝生広場」が臨時駐車場として開放されることもあるようだが、公園の規模から考えればそれでも足りないかもしれない。
駐車場の横手から背後の雑木林の中に分け入る小径が上っている。小径は公園の西端部に沿って西南側へと延び、尾根道の西端部へと繋いでいる。この道は「津久井往還」と呼ばれる旧街道で、三軒茶屋から津久井へと結んでいたらしい。津久井で捕れた鮎を江戸まで運んだ道であることから「鮎のみち」と呼ばれていたのだと、公園のパンフレットには書かれている。現在の公園内の「鮎道」は舗装されているが、林の中を抜けてゆく小径の風情に昔を偲ぶことはできる。雑木林のほとんどが「サンクチュアリ」となって立ち入りのできない小山内裏公園に於いて、雑木林の中を歩くことのできる数少ない場所のひとつでもある。この「鮎道」はちょうど市境に当たっているようで、「鮎道」より外側は八王子市鑓水二丁目になる。「鮎道」を西へ抜ければ尾根道の西端部、すなわち小山内裏公園の西端部だ。
公園の東端部は八王子市南大沢四丁目に位置し、雑木林の丘を抜ける散策路や草はらの広場などが置かれている。小山内裏公園の一部というより、隣接する別の公園であるかのような印象も受ける。もっぱら西側に隣接する南大沢四丁目の住宅地に暮らす人たちが日常的に利用しているのではないだろうか。
「草地広場」は、名を見ればわかるが、開放感のある草はらの広場だ。ところどころに植栽されたクスノキが程良く木陰を落とし、広場の表情に潤いを与えている。西側は住宅地だが、広場は住宅地から少し高くなっており、さらに外縁部の木立で隔てられているために、広場は日常を離れた穏やかな空間を成している。東側には雑木林の丘が横たわり、緑濃い佇まいだ。例えば家族連れなどで休日のひとときをのんびりと過ごすのに良い場所だろう。トイレや水飲み場なども設置されており、小山内裏公園の中ではそうした使い方の似合う数少ない場所のひとつだ。
「草地広場」から舗道に沿って南大沢四丁目の端正な街並みを見ながら北へ降りてゆくと、円形の広場がある。林を背負って円弧状のパーゴラが設置され、その下にベンチが置かれている。その北側、小山内裏公園の北東の端に「多目的広場」が置かれている。パーゴラの設置された一角も「多目的広場」の一部という位置づけなのかもしれない。「多目的広場」のメインとなっている広場はゲートボールなどに使用することを前提にした平坦な「グラウンド」だ。その横手に木陰のベンチやトイレが置かれている。広場脇の丘の斜面を利用して三基の滑り台も設置されている。ひとつは少し幅広の滑り台で、残りふたつは通常の幅だが途中で緩やかなカーヴが与えられている。小山内裏公園に於ける、これが唯一の遊具で、普段は近所に暮らす子どもたちの遊び場になっているようだ。広場の脇から北側のバス通りを跨いで人道橋が南大沢四丁目の住宅街に繋いでいる。
「草地広場」や「多目的広場」から雑木林の丘に上る小径がある。小径を辿れば昔の里山を彷彿とさせる林の中の散策を楽しむことができる。小山内裏公園の中で林の中の散策が楽しめるのは、西端部の「鮎道」とこの一角だけだ。雑木林散策の好きな人なら見逃せない場所だと言っていい。林の中の小径を辿って行くと、「多目的広場」から尾根を挟んだ西側に小さな谷戸がある。谷戸は草木が生い茂り、緑の尾根に挟まれて静かな佇まいだ。谷戸の北端部には池があり、公園のリーフレットにも「内裏池」として記されているのだが、フェンスに囲まれた小さな池には特に観察用のデッキなども設置されてはおらず、それほど魅力的なものとは言えないのが残念だ。
「多目的広場」から「内裏池」の前を経て、公園の北側外縁部を辿って舗道が東西に延びている。舗道は多摩ニュータウン通りを越え、西側では「パークセンター」北側の道路歩道へと達している。
「多目的広場」から「内裏池」の前を経て、公園の北側外縁部を辿って舗道が東西に延びている。舗道は多摩ニュータウン通りを越え、西側では「パークセンター」北側の道路歩道へと達している。
公園の最寄り駅は京王相模原線多摩境駅で、駅から徒歩で5分ほどだが、公園の「裏口」から入ってゆくような印象もある。南大沢駅からバス路線を利用すればパークセンター前から公園に入ってゆくことができる。南大沢駅から南大沢五丁目の街の中を辿る舗道を辿って小山内裏公園の「水辺の広場」へと入ってゆくルートも散策は楽しく、お薦めしたいところだ。詳細な施設の利用案内や問い合わせ先などは、東京都公園協会のサイト(頁末「関連する他のWEBサイト」欄のリンク先)を参照されたい。