横浜線沿線散歩公園探訪
町田市小山ヶ丘〜八王子市南大沢〜鑓水
小山内裏公園
September 2006
小山内裏公園
京王相模原線多摩境駅の北側の丘の上に小山内裏(おやまだいり)公園という都立の公園がある。公園のある丘は町田市と八王子市の市境の尾根筋に当たっており、公園は町田市小山ヶ丘四丁目から北側の一部では八王子市に跨って広がっている。園内には里山の雑木林が広く残るものの「サンクチュアリ(動植物保護区域)」として立ち入りが制限されている部分も少なくなく、里山の自然の保全が優先された公園のようだ。尾根道を中心にして随所に広場などが設けられおり、尾根道の爽快感を味わいながらの散策が楽しい。
小山内裏公園尾根道
小山内裏公園は町田市と八王子市との境の尾根道とその周囲に残された雑木林を整備して開園したものと言っていい。公園の中心になっているのは尾根に沿って延びる尾根道だ。この尾根道は「戦車道路」の名で知られていたもので、公園はその西端部に当たる。「戦車道路」は第二次大戦末期、相模陸軍造兵廠で製造された戦車の走行テスト用に造られたものだという。全長約8キロに及び、その東端は町田市下小山田町の南端部、町田市リサイクル文化センター近くにまで達している。町田市はこの「戦車道路」を緑道として整備を進め、「尾根緑道」の名で市民に親しまれている。特に東端部から1.5キロほどの区間は昭和59年度事業として先行して整備が完了し、春の桜の名所として広く知られている。小山内裏公園は東京都立だから管理は異なるが、公園内の尾根道も「尾根緑道」の一部を成していると考えてもまったく違和感はなく、公園東端部では園内の尾根道はそれと意識することなく「尾根緑道」へと繋がっている。

小山内裏公園尾根道
公園内の尾根道、すなわちかつての「戦車道路」は、尾根の高みに沿って延び、公園内ではかなりくねくねと曲がっている。尾根道は舗装路で、当然のことながら車両の通行も可能なほどの広さだが、もちろん車両の進入は禁止されており、のんびりと散策を楽しむことができる。舗装路だから自転車や車椅子、ベビーカーなどの通行にも困難がなく、サイクリングを楽しむ人やベビーカーを押して家族で散策を楽しむ人の姿も少なくない。舗装路の南側には未舗装の小径がまるで一般路に於ける「歩道」のように沿っており、木陰になった小径は日差しの強い季節の散策には嬉しい。

小山内裏公園尾根道
尾根道沿いには「東展望広場」、「西展望広場」と名付けられた二箇所の展望所が設けられている。展望広場は双方とも尾根道が曲がって大きく南側へ張り出した突端部分に設けられており、「展望」の名が示すように南へ眺望が開けている。眼下には多摩境駅周辺の街並みが間近に、その向こうには相模原市の市街地が、そしてさらに丹沢の山並みまで見渡すことができる。南側への眺望だから景色は逆光の中に霞みがちだが、広く開けた視界はなかなか爽快な眺めだ。広場にはベンチや四阿が設置されているから散策途中の一休みにもちょうどよい。
公園の中心、あるいはメインエントランスと言える部分は、公園中央部北側に設けられている。大きく公園名を記した入口があり、その傍らに管理所を兼ねた「パークセンター」が置かれている。「パークセンター」前の道路には京王バスの「南大沢五丁目循環」などの路線が通っており、「南大沢学園前」バス停が公園入口横手に設けられている。公園そのものの大部分は町田市小山ヶ丘四丁目に位置し(「パークセンター」自体も住所の上では町田市小山ヶ丘四丁目だ)、公園へのアクセスも多摩境駅が至近であるのだが、公園のエントランスは八王子市南大沢の街に向かって開かれている印象がある。

小山内裏公園パークセンター
管理事務所を兼ねた「パークセンター」は公園で行われる各種イベントの拠点にもなる施設で、さまざまな講習会なども行われているという。館内は自由に利用することができ、来園者のための休憩所としても機能している。イベント情報などのインフォメーションの他、館内には公園内で見られる動植物の写真パネルや蝶の標本なども展示されている。来園時には立ち寄っておきたい。公園のリーフレットも用意されているから、これを貰っておくとよいだろう。室内からは窓外にセンター裏手の「里山広場」の風景を見ることができ、緑濃い景色を眺めながら一休みするのも悪くない。入口脇にドリンク類の自販機が置かれているのも嬉しい。

小山内裏公園里山広場
「パークセンター」の裏手、南側に「里山広場」と名付けられた広場がある。中央部がわずかに盛り上がった草はらに木々が植栽されて広場を成している。植栽された木々はまだ小さいが、やがて大きく育てばまた広場の表情も変わるだろう。バス通りにも近いが三方を緑の尾根に囲まれた広場は街の喧噪から離れて静かで落ち着いた佇まいだ。陽気の良い季節の休日に木陰にシートを広げてのんびりと過ごすのに良い場所だろう。「里山広場」の奧に尾根道へと上る小径があり、そこから尾根道散策へと歩を進めるといい。「里山広場」と「パークセンター」の東側にフェンスに囲まれて「バーベキュー広場」がある。名の通り、バーベキューを楽しむための一角で、バーベキュー用の「かまど」などが設置されている。年末年始以外はいつでも利用することができるようだが、利用するためには事前の申し込みが必要で、先着順とのことだ。
小山内裏公園水辺の広場
「パークセンター」の西へ、バス通りを右に見ながら緩やかな坂道となった舗道を辿って行くと、左手に池がある。池の前は「水辺の広場」と名付けられ、池を見下ろす観察デッキなどが整備されている。池は「大田切池」という。そもそもこの辺りの谷戸が大田切谷戸と呼ばれていたことから、池を「大田切池」と名付けたものという。「大田切」とは「大田川が切れるところ」を意味しているらしい。すなわち大田川の最源流部に当たるということだ。池は昭和60年頃に周辺の宅地開発に伴い、大雨のときの水量調節のために流れをせき止めて造られたものという。池の中には枯れ木が印象的に立っているが、これはもともとは大田川の岸辺に立っていた杉の木で、池の中に没してしまったために立ち枯れてしまったものであるらしい。そういった池の由来や、池の周辺で見られる動植物についての解説などが、岸辺のデッキの随所に設けられている。周辺が宅地造成される以前の、山深い谷戸であった頃の風景を想像しながら池を眺めるのも感慨深いものがある。池の背後の雑木林は「サンクチュアリ」となっており、通常は立ち入りができないのが少しばかり残念だが、谷戸周辺に残る貴重な自然がいつまでも残ることを願いたい。

現在の大田川は源流部は暗渠となり、南大沢駅の北東側から地上を流れている。そこから多摩ニュータウン通りの北側を通りに沿うように南大沢一丁目の南端部を流れ、京王相模原線堀之内駅の北方で大栗川に合流、大栗川はさらに北東へ流れて多摩市関戸付近で乞田川と合流してすぐに多摩川に注ぐ。すなわち「大田切谷戸」は多摩川の水系に位置しているわけだが、尾根の向こうの南側は境川の水系であるわけで、公園の中心となっている尾根は両水系の分水嶺だということになる。そのようなことを考えながら尾根道を歩くのも楽しい。

「水辺の広場」から北東側へ、バス通りを美しいアーチの橋でくぐって舗道が南大沢五丁目の街へと延びている。緑濃い歩道は南大沢緑地南大沢うずまき公園などの小公園を繋いで辿り、美しい街並みの「ベルコリーヌ南大沢」を抜けて南大沢駅方面へと繋いでいる。散策の足を延ばしてみるのも悪くない。
「水辺の広場」の西側には駐車場が設けられている。23台分の駐車スペースがあるということだが、やはり少ない。駐車場の傍らの「芝生広場」が臨時駐車場として開放されることもあるようだが、公園の規模から考えればそれでも足りないかもしれない。

小山内裏公園鮎道
駐車場の横手から背後の雑木林の中に分け入る小径が上っている。小径は公園の西端部に沿って西南側へと延び、尾根道の西端部へと繋いでいる。この道は「津久井往還」と呼ばれる旧街道で、三軒茶屋から津久井へと結んでいたらしい。津久井で捕れた鮎を江戸まで運んだ道であることから「鮎のみち」と呼ばれていたのだと、公園のパンフレットには書かれている。現在の公園内の「鮎道」は舗装されているが、林の中を抜けてゆく小径の風情に昔を偲ぶことはできる。雑木林のほとんどが「サンクチュアリ」となって立ち入りのできない小山内裏公園に於いて、雑木林の中を歩くことのできる数少ない場所のひとつでもある。この「鮎道」はちょうど市境に当たっているようで、「鮎道」より外側は八王子市鑓水二丁目になる。「鮎道」を西へ抜ければ尾根道の西端部、すなわち小山内裏公園の西端部だ。
小山内裏公園南広場
「パークセンター」や「里山広場」のある一角から尾根道を挟んだ反対側の南側には「南広場」がある。多摩ニュータウン通りがちょうどこの下をトンネルで抜けており、公園前の道路の向こうに多摩ニュータウン通りと多摩境通りとの交差点付近の商業施設が間近に見える。「南広場」の奧に、フェンスに囲まれた一角があった。「わんわんふれあい広場」と名付けられている。いわゆる「ドッグラン」で、大型犬のスペースと小型犬のスペースとに分けられている。「わんわんふれあい広場」は「南広場」の奧、木立に囲まれた場所にあり、木陰となった広場は日差しの強い季節にはありがたいものだろう。「わんわんふれあい広場」の利用者に対して、周辺の道路には決して駐車しないようにとの注意書きが掲げられている。守られない場合には広場の閉鎖もあり得るとの旨の強い口調だ。留意して欲しいと思う。
公園の東端部は八王子市南大沢四丁目に位置し、雑木林の丘を抜ける散策路や草はらの広場などが置かれている。小山内裏公園の一部というより、隣接する別の公園であるかのような印象も受ける。もっぱら西側に隣接する南大沢四丁目の住宅地に暮らす人たちが日常的に利用しているのではないだろうか。

小山内裏公園草地広場
「草地広場」は、名を見ればわかるが、開放感のある草はらの広場だ。ところどころに植栽されたクスノキが程良く木陰を落とし、広場の表情に潤いを与えている。西側は住宅地だが、広場は住宅地から少し高くなっており、さらに外縁部の木立で隔てられているために、広場は日常を離れた穏やかな空間を成している。東側には雑木林の丘が横たわり、緑濃い佇まいだ。例えば家族連れなどで休日のひとときをのんびりと過ごすのに良い場所だろう。トイレや水飲み場なども設置されており、小山内裏公園の中ではそうした使い方の似合う数少ない場所のひとつだ。

小山内裏公園多目的広場
「草地広場」から舗道に沿って南大沢四丁目の端正な街並みを見ながら北へ降りてゆくと、円形の広場がある。林を背負って円弧状のパーゴラが設置され、その下にベンチが置かれている。その北側、小山内裏公園の北東の端に「多目的広場」が置かれている。パーゴラの設置された一角も「多目的広場」の一部という位置づけなのかもしれない。「多目的広場」のメインとなっている広場はゲートボールなどに使用することを前提にした平坦な「グラウンド」だ。その横手に木陰のベンチやトイレが置かれている。広場脇の丘の斜面を利用して三基の滑り台も設置されている。ひとつは少し幅広の滑り台で、残りふたつは通常の幅だが途中で緩やかなカーヴが与えられている。小山内裏公園に於ける、これが唯一の遊具で、普段は近所に暮らす子どもたちの遊び場になっているようだ。広場の脇から北側のバス通りを跨いで人道橋が南大沢四丁目の住宅街に繋いでいる。

小山内裏公園
「草地広場」や「多目的広場」から雑木林の丘に上る小径がある。小径を辿れば昔の里山を彷彿とさせる林の中の散策を楽しむことができる。小山内裏公園の中で林の中の散策が楽しめるのは、西端部の「鮎道」とこの一角だけだ。雑木林散策の好きな人なら見逃せない場所だと言っていい。林の中の小径を辿って行くと、「多目的広場」から尾根を挟んだ西側に小さな谷戸がある。谷戸は草木が生い茂り、緑の尾根に挟まれて静かな佇まいだ。谷戸の北端部には池があり、公園のリーフレットにも「内裏池」として記されているのだが、フェンスに囲まれた小さな池には特に観察用のデッキなども設置されてはおらず、それほど魅力的なものとは言えないのが残念だ。

「多目的広場」から「内裏池」の前を経て、公園の北側外縁部を辿って舗道が東西に延びている。舗道は多摩ニュータウン通りを越え、西側では「パークセンター」北側の道路歩道へと達している。
小山内裏公園
小山内裏公園は46haほどの面積を有し、かなり広い公園だと言っていいが、木々の茂った尾根がその大部分を占めており、さらに「サンクチュアリ」として立ち入りが制限されている区域も多く、なかなかその広さを実感しにくい。公園は尾根の緑道を中心に、その沿道の随所に広場などを設けたという印象が強く、各部分が融合してひとつの公園として成り立っていると言ってもいい。尾根道や北側の舗道などを辿って歩けばそれなりの距離があり、そのあたりは公園の広さを感じるところだが、その広さを実感できるような開放感に溢れる広場などがないのは尾根を中心にした立地では仕方のないところか。尾根道を辿ってそこからの展望などを楽しみつつのんびりと散策するのが、この公園の楽しみ方として最も相応しいものかもしれない。家族連れやグループなどでのんびりと休日のひとときを過ごすというような利用の仕方には、パークセンター裏の「里山広場」や東端部の「草地広場」が充分に応えてくれるだろう。尾根道には桜も多く、春の景観も楽しめる。四季折々に散策を楽しみたい公園だ。

公園の最寄り駅は京王相模原線多摩境駅で、駅から徒歩で5分ほどだが、公園の「裏口」から入ってゆくような印象もある。南大沢駅からバス路線を利用すればパークセンター前から公園に入ってゆくことができる。南大沢駅から南大沢五丁目の街の中を辿る舗道を辿って小山内裏公園の「水辺の広場」へと入ってゆくルートも散策は楽しく、お薦めしたいところだ。詳細な施設の利用案内や問い合わせ先などは、東京都公園協会のサイト(頁末「関連する他のWEBサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
小山内裏公園