横浜市中区山手町
山手西洋館
世界のクリスマス2009
Visited in December 2009
今年もまた「山手西洋館 世界のクリスマス」が12月1日から25日までの期間で開催される。横浜山手地区に点在する洋館を舞台に、それぞれテーマの国を決めてクリスマスの飾り付けが行われるものだ。その初日、早速「山手西洋館 世界のクリスマス」を訪ねた。
「横浜市イギリス館」では当然だがイギリスがテーマ国になっている。例年、英国流のテーブルセッティングなどが披露されて楽しませてくれるが、今年は少々趣向が異なっている。「山手西洋館 世界のクリスマス」のリーフレットに記された案内によれば「スウェーデンボルグへのオマージュ」と題され、「ロンドンでキリストの幻視体験をしたスウェーデン人の思想家スウェーデンボルグへのオマージュ」がテーマだという。コーディネーターとして「MINI et MAXI」と「MINI et MAXI」を主宰する林聡子氏、そしてイワハラカオリ氏の名が記されている。そのテーマからも察しがつくが、”クリスマスの飾り付け”というより、アート作品の展示だ。スウェーデンボルグは18世紀前半に活動していた思想家で、神秘主義的思想の著作を多数発表したことで知られている。スウェーデンボルグの思想に詳しくない身ではよくわからないが、展示された作品はスウェーデンボルグの思想を表現したものなのだろうか。
「山手111番館」のテーマ国はポルトガルだ。「海から始まる煌きのクリスマス」というタイトルが付けられている。中央の吹き抜けとなった部屋には白と銀色を基調にしたオブジェが飾られ、なかなか幻想的な雰囲気だが、隣の部屋のテーブルセッティングは白いクロスに緑と赤をあしらい、こちらは落ち着いた佇まいだ。窓辺に置かれた花の飾り付けも美しい。別の部屋ではさらに素朴な印象で、窓に吊されたオーナメントも可愛らしい。各部屋毎に味わいが異なっているのが楽しい。コーディネーターはローヤルフラワースクール銀座校の斉藤良枝氏だ。日葡修好通商条約150周年記念としてポルトガル大使館と社団法人日本ポルトガル協会の後援が得られているようだ。
「山手234番館」はコスタリカがテーマ国として選ばれている。「世界一幸せな国のクリスマス」というタイトルだ。コスタリカは北米大陸と南米大陸とを繋ぐ、いわゆる「パナマ地峡」に位置する小国だ。暑い地域の国だから雪もモミの木もないそうで、形式にこだわらない飾り付けを各家庭で工夫しているという。クリスマスカラーを基調にした飾り付けは家庭的な雰囲気で、テーブルに配された小物類がなかなか楽しい。コスタリカ共和国政府観光局の後援、協力があり、コーディネーターは日本コスタリカ自然保護協会事務局長の五十嵐義明氏で、押し花デザイナーの遠藤千晶氏、フラワーデザイナーの矢田真由美氏がフラワーデザインを担当しているようだ。
「エリスマン邸」はテーマ国はフランス、「Riviere de Bronze【ブロンズ色の川】」と題されている。リーフレットの案内によれば「館の玄関からアンティークなブロンズ色の装飾が食堂、応接室へと川の流れのように広がります」とのことで、そのテーマがよく表現された飾り付けだ。華美な印象はなく、シックで落ち着いた装飾がたいへんに美しい。フランス観光開発機構と横浜日仏学院の後援、コーディネーターは株式会社ハマフローリスト、デザインを担当しているのはローラン・ボーニッシュ氏のようだ。
「ベーリックホール」のテーマ国はイギリス、「ベリック邸のクリスマス」と題され、「Cozyで温かなファミリークリスマス」というサブタイトルが付けられている。かつてこの建物を建てたイギリス人貿易商ベリックが家族と過ごしたクリスマスをイメージした飾り付けという。今年は横浜市イギリス館の飾り付けがアート作品展示に寄ったものだから、イギリスの家庭的なクリスマスの飾り付けはこちらで見ることができるというわけだ。いかにも家庭の飾り付けという印象で、派手さはなく、家族で楽しむクリスマスの様子がうまく表現されているように思える。子供部屋にはクマのぬいぐるみなども置かれて、いかにも子ども部屋という雰囲気だが、ベリック氏がこの家に住まったころにはご子息はすでに成人していたということだから、テーマに沿ったイメージでの演出だろう。コーディネーターはケイティー恩田氏だ。ケイティー恩田氏は英国の文化をウェブサイトやメールマガジンで紹介する傍ら、東京横浜の各地で、英国紅茶の楽しみ方やガーデニング、テーブルセッティングなどのレクチャーを行っている。
山手公園内の旧山手68番館(現在はテニスクラブのクラブハウス)はアメリカがテーマ国、「ブリリアントなクリスマス」と題されている。リーフレットの案内によれば「つややかな赤をアクセントカラーにした、自由の国アメリカらしい明るく楽しいクリスマスを楽しんでください」とのことだ。テニスクラブのクラブハウスとして使われているという関係から規模の大きな飾り付けではないが、フロア中央に置かれたテーブルのフラワーデザインが目を引く。派手に過ぎずセンスよくまとめられていながら、まさに”ブリリアント”な印象の飾り付けだ。コーディネーターはフラワーサークル「Sur La Colline」を主宰する大堀輝美氏だ。
「外交官の家」のテーマ国はノルウェー、「森と氷のバラード 〜遥かなるオーロラに想いを寄せて〜」と題されている。家庭的な雰囲気の中にアート作品としての印象もある。少しばかり荘厳さも感じられるのは、リーフレットの案内にも記されているように、”美しく、時に厳しい自然と共生するノルウェーの人々の暮らし”を表現したものなのだろう。テーブルや椅子の上などに配された小さなサンタクロースは、”サンタクロース”というより北欧の民話に語られる妖精「ニッセ」を思わせる。これがなかなか可愛らしい。コーディネーターとして「Nordic Culture, JAPAN」の井上勢津氏、フラワーデザイナーの山口円氏の名が記されている。ノルウェー王国大使館、スカンジナビア政府観光局、日本・ノルウェー音楽家協会などの後援、協力による。余談だが、入口前の横手に置かれた木製の”サンタクロース”は昨年(2008年)の山手68番館での「フィンランドのクリスマス」で使われたものの流用のようだ。
「ブラフ18番館」はイタリアがテーマ国、「Buon Natale 〜愛と平和のクリスマス」というタイトルが付けられている。赤、緑、白という色彩を印象的に使った飾り付けで、鮮やかでありつつもシックで洗練された印象で、いかにも”イタリアンデザイン”を思わせるものだ。赤を白のストライブのテーブルクロスや窓に提げられた赤いカーテンなどが強い印象を残す。深い赤はいわゆる”イタリアンレッド”だろうか。コーディネーターはフラワーデザイナーの左布ゆう子氏、ピースフラワーマーケットの名が記されている。
今年もそれぞれに楽しめる「山手西洋館 世界のクリスマス」だった。各館それぞれにコーディネーターが趣向を凝らしており、各コーディネーターの作品として見てゆくのも楽しい。開催期間中は各館でコンサートやリース作りなどのイベントも行われる。イベントの開催予定を調べて、それに合わせて訪ねてみるのもお勧めだ。夜になれば各館がイルミネーションで飾られ、22日と23日にはイタリア山庭園で「キャンドルカフェ」も開催される。時間が許せば夜の表情も楽しんでおきたいところだ。またみなとみらい地区に位置する「クロスパティオ」も会場のひとつになっており、こちらではデンマークをテーマ国とした内容で開催されている。余裕があれば足を延ばしてみたいところだ。
各館の受付に「山手西洋館 世界のクリスマス2009」の案内リーフレットが用意されている。最初に訪れた洋館でリーフレットを入手しておくのをお勧めする。リーフレットには横浜山手地区のイラストマップが載せられているから、初めて山手を訪れる人はこれを頼りにするとわかりやすい。洋館は靴を脱いで入館しなくてはならないところが多いから、訪れるときは脱ぎ履きのしやすい靴を履いていった方がいい。また靴の履き間違いも少なくないらしいので、注意が必要だ。
各館の受付に「山手西洋館 世界のクリスマス2009」の案内リーフレットが用意されている。最初に訪れた洋館でリーフレットを入手しておくのをお勧めする。リーフレットには横浜山手地区のイラストマップが載せられているから、初めて山手を訪れる人はこれを頼りにするとわかりやすい。洋館は靴を脱いで入館しなくてはならないところが多いから、訪れるときは脱ぎ履きのしやすい靴を履いていった方がいい。また靴の履き間違いも少なくないらしいので、注意が必要だ。