幻想音楽夜話
Picks Log
ちょっと気になっている音楽やアーティストについて、あるいは気になった音楽シーンの話題について、「幻想音楽夜話」のトップページの「Picks」欄に短いコメントで気ままに記しています。このページはその「Picks」欄の過去ログです。「Picks」欄の過去ログは年毎にまとめてあります。メニューから表示ページを選択して下さい。最新のものは「幻想音楽夜話」トップページでどうぞ。
2015年個人的年間アルバムベスト3
今年は「PICKS」欄をあまり書かなかった気がする。来年はもう少し頻繁に書こう。それはともかく、今年もやることにする、「個人的年間アルバムベスト3」。購入したCDの中から、2015年に発売された「新作アルバム」と「復刻アルバム」、それぞれ3枚、選んでみた。順番は発売日順、上のものから1位、2位、3位ではない。「復刻アルバム」は必ずしも今年が初めての復刻というわけではない。

【新作】
「Spirit Of The Pen Friend Club / The Pen Friend Club」
「My Favorite Songs / 高中正義」
「Cass County / Don Henley」

なんと言っても、やはり「Spirit Of The Pen Friend Club / The Pen Friend Club」だ。昨年彼らを知ってからというもの、その音楽への興奮が冷めない。このセカンドアルバムもすっかり気に入ってしまって何度も何度も繰り返し聴いた。来年(2016年)の1月にはサードアルバムが発売されるそうだ。待ち遠しい。きっとそのサードアルバムは来年(2016年)のこの欄に登場することだろう。高中正義の「My Favorite Songs」も良かった。有名曲も彼のギターで聴くとまた別の味わいだ。それから「Cass County / Don Henley」、これが驚くほど良かった。彼の歌声が衰えていないことが嬉しい。他にも藤原さくらの新作とか、Boz Scaggsの「A Fool To Care」とか、David Gilmourの「Rattle That Lock」とか、Lucas Arrudaの「Solar」とか、Spandettesの「Sequin Sunrise」とか、気に入ったアルバムがいろいろあったが、今年は上記3作をベスト3としておきたい。

【復刻】
「色彩感覚 / 亜蘭知子」(吉田保氏による2015年リマスタリング音源)
「First Hit / Arrows」(最新リマスター)
「夜の旅人 / 松任谷正隆」(最新リマスター)

亜蘭知子は「神経衰弱」と「色彩感覚」の二作が同時リイシューで、もちろんどちらも購入したわけだけれども、どちらが好きかと言われれば「色彩感覚」ということで挙げさせていただく。「First Hit / Arrows」はちゃんとしたリイシュー盤が欲しいとずっと思っていたので嬉しかった。松任谷正隆の「夜の旅人」も嬉しいリイシューだった。Sugar Babeの「SONGS〜40th Anniversary Ultimate Edition〜」は次点ということにさせていただく。他には吉田保氏リマスターによるRajie(ラジ)やEPOの諸作、Rick Wakemanの「Six Wives Of Henry VIII」と「Myths And Legends Of King Authur And The Knights Of The Round Table」 のDeluxe Edition、Henry Cowの諸作、David Bowieの「Five Years 1969-1973」など、気になるリイシューがいろいろとあったのだが、これらはけっきょく購入を見送ってしまった(主に経済的理由による)。
December 22, 2015
Cass County / Don Henley
ドン・ヘンリー、15年ぶりのソロ5作目だ(10月2日に発売)。テキサス生まれの彼が、いわば原点回帰したアルバムだ。カントリー色も強いが、単純なカントリー・アルバムではない。これが素晴らしい出来映えだ。カヴァー曲も収録されているが、なんと言っても Stan Lynch や Steuart Smith らと共に書かれたオリジナル曲がいい。ほどよく力が抜けていて、しかししっかりメッセージ性を感じさせる。ゆったりとしていて少しセンチメンタルなメロディとドンの歌唱が胸を打つ。1970年代のイーグルスを愛したファンなら、ぜひとも聴いてみるべき。泣けてくるぞ。
November 25, 2015
Rattle That Lock / David Gilmour
「二、三度聴いたら日常的には聴かなくなるだろうな」と思いつつ、もちろん Blu-ray 付きの Deluxe Edition を発売直後に買ったのだけれども、いや、けっこう何度も繰り返し聴いている。相変わらずの耽美的で感傷的な彼の音楽世界がやっぱり好きだ。
November 14, 2015
My Favorite Songs / 高中正義
高中正義の、タイトル通りに自分のお気に入りの楽曲をギターでカヴァーした新作アルバムだ。「Desafinado」や「One Note Samba」、「Girl from Ipanema (Garota De Ipanema) 」といったボサノヴァの名曲からサンタナの「Samba Pa Ti」、メゾフォルテの楽曲、さらにはショパンの「別れの曲」など、範囲は幅広いが、「あぁ、なるほどな」と思わせる選曲だ。どの楽曲も“高中節”のギターサウンドで、聴いていてこの上なく心地よい。やっぱり夏に似合うサウンドだから夏前に発売して欲しかったな。第二弾も希望。
October 7, 2015
Solar / Lucas Arruda
このところよく聴いているのが、これだ。ブラジルのミュージシャン、ルーカス・アルーダのセカンド・アルバム「Solar」。2013年に発表したデビュー・アルバム「Sambadi」が話題になったらしいのだが、その時はよく知らずにいた。セカンド・アルバムの話題を目に留めて、CDを購入してみたのだが、評判通りの素晴らしさだった。波にたゆたうような浮遊感が気持ちいい、クールなブラジリアン・メロウ・グルーヴだ。豪華ゲスト陣を迎えてアナログ機材のみを使用してレコーディングしたそうで、デジタル臭さが全くないのがいい。アレックス・マリェイロス(アジムスのベーシスト)のベースもいいぞ。
July 10, 2015
クリス・スクワイアを悼む
クリス・スクワイアが亡くなったそうだ。今年6月に白血病であることを発表し、治療を続けていたが、ついに帰らぬ人となった。享年67。また一人、ロック・シーンは偉大なミュージシャンを失った。ロックというものを聴くようになってから、ずっとイエスのファンだった。クリス・スクワイアのベースがあってこそのイエス・サウンドだった。あまりにも惜しまれる。言葉もない。今夜はクリスを偲んでイエスを聴こう。心からご冥福をお祈りします。
June 30, 2015
When the World is Wide / Ykiki Beat
Ykiki Beat がついにファースト・アルバムを発表するそうだ。「Forever」の一曲だけで音楽ファンの期待を集めていた Ykiki Beat だ。待望のファースト・アルバムと言っていい。「Forever」は素晴らしい楽曲だった。ファースト・アルバムでどれほどの実力を見せてくれるのだろう。期待が高まる。ファースト・アルバム「When the World is Wide」は7月22日発売だ。
June 6, 2015
Summer Soul / cero
ここ最近、FMで耳にして妙に気になるのが cero の「Summer Soul」だ。ちょっと気怠い感じのメロウグルーヴが好みだぞ。cero についてほとんど何も知らないので、YouTubeで探してみた。「Orphans」を聴いてみたら、「あぁ、この人たちか」と思ってしまった。
May 26, 2015
B・B・キングを悼む
B・B・キングが5月14日、ラスヴェガスの自宅で亡くなった。享年89。個人的にはエリック・クラプトンと制作した「Riding With the King」が記憶に新しい。偉大なブルース・マンだった。ご冥福をお祈りします。
May 17, 2015
ベン・E・キングを悼む
ベン・E・キングが4月30日に亡くなった。享年76。ベン・E・キングと言えば「スタンド・バイ・ミー」、素晴らしいシンガーだった。ご冥福をお祈りします。
May 10, 2015
未来 / Drop's
Drop's は札幌在住の女の子5人のバンドだそうだ。可愛らしいバンド名だが、その印象に反して骨太のブルース・ロックを聴かせる。「さらば青春」も良かったが、今度の「未来」もいい。楽曲そのものもいいが、何と言っても歌声がいい。ぐっと胸に迫る歌声だ。今はまだFMで耳にしているだけだが、アルバムを買って本気で聴き込んでみたい。
April 28, 2015
加瀬邦彦を悼む
ワイルド・ワンズの加瀬邦彦が20日に亡くなった。享年74。「想い出の渚」は永遠の名曲だ。ご冥福をお祈りします。
April 23, 2015
à la carte / 藤原さくら
このところ、藤原さくらの「à la carte」を繰り返し聴いている。3月18日に発売された藤原さくらの新作、実は正式にはこれが“デビュー盤”だ。全部で6曲しか収録されていないので、“ミニアルバム”というべきか。「full bloom」から約1年、その成長ぶりが窺える出来栄えだ。味わい深い自作曲の魅力もさることながら、やはり彼女の歌声に魅了されてしまう。藤原さくらの歌声はさらに磨きがかかり、自信に満ちている。素晴らしい。
March 25, 2015
アンディ・フレイザーを悼む
アンディ・フレイザーが3月16日に亡くなった。享年62。個人的にはフリーのサウンドの独自性はアンディ・フレイザーのベースにこそあったと思っている。フリーは大好きなバンドで、どの楽曲も好きだが、中でも「オール・ライト・ナウ」は大好きな楽曲だ。今夜はアンディを偲んで久しぶりに「オール・ライト・ナウ」を聴こう。ご冥福をお祈りします。
March 19, 2015
Sprit Of The Pen Friend Club
The Pen Friend Clubの待望のセカンドアルバムだ。そう、“待望の”という表現がまさに相応しい。昨年のファーストアルバム「Sound Of The Pen Friend Club」から約10ヶ月、セカンドアルバムの発表を心待ちにしていたファンは少なくないのではないか。ファーストアルバムが実質7曲しか収録されていなかったから(アルバムはその7曲のステレオ・ヴァージョン、モノラル・ヴァージョンに加え、4曲のアカペラ・ヴァージョンとインストゥルメンタル・ヴァージョンを収録した内容だった)、その音楽のクオリティが高いだけに、もっといろいろな楽曲を聴きたいと、少しばかり欲求不満気味にもなった。早くセカンドアルバムが聴きたいと思っていた。そこへ届けられたセカンドアルバムだ。期待通り、いや期待以上に素晴らしい。ファーストアルバムからセカンドアルバムとの間に若干のメンバーチェンジがあり、リード・ヴォーカルが変わったので、そのせいで音楽の佇まいが変わってしまうのではないかとの不安もあったが、杞憂だったようだ。ファーストアルバム同様に、そこにはドリーミーでスイートで少しセンチメンタルでノスタルジックな60年代中期のウエストコーストミュージックが詰まっている。今回収録されている楽曲は10曲、そのステレオ・ヴァージョンとモノラル・ヴァージョンの20トラックが収録されている。オリジナル曲が3曲、残り7曲がカヴァーだ。今回は「Guess I'm Dumb」や「Please Let Me Wonder」、「Wichita Lineman」といった名曲から「Dusty」や「The Monkey's Uncle」といったマニアックな楽曲も取り上げている。「Wichita Lineman」はグレン・キャンベルの有名曲(書いたのはジミー・ウェッブ)だが、原曲とは違ったアレンジでThe Pen Friend Club風のサウンドに仕上げている。夢見るような味わいが素晴らしいぞ。ちょっとおもしろいところではキャプテン&テニールの1970年代のヒット曲「Love Will Keep Us Together(愛ある限り)」を取り上げている。この楽曲、実は個人的には1970年代当時、あまり好きではなかったのだが、The Pen Friend Clubのカヴァーはなかなかいい。個人的にはオリジナルより好きだ。オリジナル曲も相変わらずクオリティが高く、名曲群の中に混じっても何ら遜色がない。誤解の無いように言っておくが、The Pen Friend Clubの音楽は1960年代中期のウエストコーストミュージックの単なる“コピー”ではない。1960年代中期のウエストコーストミュージックが持っていたスタイルをひとつの普遍的な音楽スタイルとして解釈し直し、自分たちのスタイルとして新たに展開したものだ。敬愛と憧憬の思いに裏付けられて演奏された楽曲の数々はどれもThe Pen Friend Clubの“1960年代中期ウエストコーストミュージック”として結実している。どの楽曲も素晴らしい。どれほど賛辞を重ねても足りない。(ベタだが)The Pen Friend Club版「I Can Hear Music」や「God Only Knows」も聴きたいぞ。
February 16, 2015
シーナを悼む
シーナ&ロケッツのシーナが、14日、子宮頸がんで亡くなった。享年61。個人的にはそれほどシーナ&ロケッツを聴いていたわけではないが、ロックという音楽を愛するファンとして、リスペクトしていたのは確かだ。ご冥福をお祈りします。
February 15, 2015
full bloom / 藤原さくら
やはりここにしっかり書いておこう。藤原さくらのことだ。「full bloom」は藤原さくらのデビューアルバムで、昨年(2014年)3月にインディーズで発売されたものだ。個人的には昨年秋頃になって彼女の存在を知り、それからすっかりその魅力の虜になってしまった。藤原さくらは福岡県出身の女性シンガー/ソングライターだ。可憐な容姿だが、低く落ち着いた歌声が印象的だ。1995年12月生まれだそうだから、19歳になったばかり。若い女性シンガー/ソングライターだからと、先入観や偏見を持って侮ってはいけない。彼女の作る楽曲も、その歌声も、近年の日本のポップミュージックシーンのトレンドからは潔く背を向けて一線を画している。と言うより、彼女の音楽的背景、あるいは音楽的基盤にあるのは海外の音楽であって、日本のポップミュージックではない。日本のポップミュージックのほとんどは「R&B」や「ROCK」を標榜していても基本的な部分に“演歌的”なものが見え隠れするものだが、藤原さくらの音楽にはそうしたところが微塵も感じられない。彼女の音楽は、いわゆる“洋楽”と同じ匂いがする。彼女のことを「シンガー/ソングライター」だと書いたが、ほとんどのミュージシャンが自ら楽曲を作るようになった昨今のミュージックシーンでは「シンガー/ソングライター」という言い方も陳腐化した観がある。しかし藤原さくらはまさに“シンガー/ソングライター”だ。彼女の音楽の佇まいには「シンガー/ソングライター」という言葉が生まれた1970年代初期のアメリカのシンガー/ソングライターのオリジネイターたちを彷彿とさせるところがある。「full bloom」の音楽はもちろん未熟さと瑞々しさとを内包して未知数の部分も多いが、久々に“大人”の鑑賞に値する大いなる才能の誕生、と言っておこう。
January 8, 2015