幻想音楽夜話
Picks Log
ちょっと気になっている音楽やアーティストについて、あるいは気になった音楽シーンの話題について、「幻想音楽夜話」のトップページの「Picks」欄に短いコメントで気ままに記しています。このページはその「Picks」欄の過去ログです。「Picks」欄の過去ログは年毎にまとめてあります。メニューから表示ページを選択して下さい。最新のものは「幻想音楽夜話」トップページでどうぞ。
2019年個人的年間アルバムベスト3
個人的な今年の総括、「個人的年間アルバムベスト3」。今年もやるぞ。購入したCDの中から、2019年に発売された「新作アルバム」と「復刻アルバム」、それぞれ3枚、選んでみた。順番は発売日順、上のものから1位、2位、3位ではない。「復刻アルバム」は必ずしも今年が初めての復刻というわけではない。

【新作】
「Blue With Lou / Nils Lofgren」
「℃-want you!」
「Who / The Who」

今年の新作アルバムは何と言っても「℃-want you!」に尽きる。昨年の「My Name is SOLEIL / SOLEIL」を上回る衝撃、サイコーだった。今も車の中でヘビロテで聴いている。個人的には“奇跡の1枚”と言っていい。他には、そのSOLEILももちろん良かった。SOLEILはこれで活動休止だそうだが、それで良さそうな気がするな。だらだらと惰性でやっていてもいいことはない。やりたいことをやって終わり、潔し。洋楽ものでは「Colorado / Neil Young & Crazy Horse」とか「Kicks / Rickie Lee Jones」とかもよかったが、Nils LofgrenとThe Whoを挙げておく。他は次点とさせていただく。

【復刻】
「Tropea / John Tropea」
「Wise As Wisdom: The Dawn Albums 1973-1975 / Fruupp」
「一触即発 デラックス・エディション / 四人囃子」

今年のリイシュー作品のNo.1は迷い無く「一触即発 デラックス・エディション / 四人囃子」だ。音質改善が著しくて素晴らしかった。以前も書いたが、初めて聴いたときの興奮を思い出すようなリイシューだった。John Tropeaの初期3作品、「Tropea」、「Short Trip To Space」、「To Touch You Again」のリイシューも嬉しかった。とりあえず最初の作品「Tropea」をここに挙げておく。それほど期待せずに買ったのにすっかり気に入ってしまったのがFruuppだ。輸入盤の4枚組箱ものなのだが、いや、こんなにステキな音楽だとは知らなかった。他は、Beatlesの「Abbey Road」も含めて次点ということにさせていただく。
December 27, 2019
「Who / The Who」
The Whoの最新作だ。もちろんThe Whoのメンバーはピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーの二人だけなのだが、それでもやっぱりThe Whoだ。ロジャー・ダルトリーの歌声と歌い方、ピート・タウンゼントのギター演奏が大好きだ。今回の新作もなかなか素晴らしいぞ。聞き惚れている。ロジャー・ダルトリーは1944年生まれの現在75歳、ピート・タウンゼントは1945年生まれで現在74歳、二人ともとてもそんな年齢には思えない。まったく衰えていない。枯れていない。いつまでも現役でいてくれ。
December 19, 2019
「一触即発 デラックス・エディション / 四人囃子」
同好の諸氏よ、「一触即発」のデラックス・エディションは入手したか。絶対に買うべきだぞ。未発表ライヴ音源や「一触即発」のモノラル・ヴァージョンが収録されているので話題だが、今回のデラックス・エディションの最大の魅力は、オリジナル・アルバムのリマスターに尽きる。今回、オリジナル・マスター・テープからのリマスターとのことで、これまでのCDとはまったく音質のクオリティーが違う。今回のものを聴いたら、もう以前のものは聴けない。音がクリアになって、その臨場感は以前のものと比べものにならない。LPを買って初めて針を下ろしたときの興奮が甦る。素晴らしい。もちろん1973年7月の杉並公会堂でのライヴ音源も、ファンなら絶対に聴くべき演奏だぞ。
November 24, 2019
「Wise As Wisdom: The Dawn Albums 1973-1975 / Fruupp」
アイルランドのプログレッシヴ・ロック・バンド、Fruuppが1971〜1975年に間にDawnレーベルから発表した4枚のアルバム、「Future Legends」、「Seven Secrets」、「The Prince Of Heaven's Eyes」、「Modern Masquerade」をパッケージしたボックスだ。Esoteric Recordsから発売されたもので、国内流通仕様も発売されている。Fruuppというバンドを、当時聴いた記憶がまったくない。その名に聞き覚えがあったから日本でも発売されていたのだろうとは思うが、1970年代初期当時、Fruuppは日本では“ほぼ無名”のバンドだったと思う。当時、さまざまなバンドの音楽を聴いたが、Fruuppだけはまったく聴いた覚えがない。というわけで、不思議に食指が動いて購入して聴いてみたわけだ。これが、いい。まぁ、確かに、いわゆる“プログレ四天王”やPFMやフォーカスや、そういったビッグネームのバンドの音楽に比べればダイナミックさとスケール感に劣るが、しかし、いいぞ。(当時からFruuppをご存知のファンには笑われそうだが)今更ながらに熱中して聴いている。やはり70年代初期のバンドの音は好きだ。
October 16, 2019
ジンジャー・ベイカーを悼む
ジンジャー・ベイカーが10月6日、亡くなった。80歳だった。死因は明らかにされていないようだが、さすがに高齢で、いろいろと健康面で芳しくなかったようだ。ジンジャー・ベイカーのことについて、ここであれこれ説明する必要もあるまい。NHKのニュースでも取り上げられていたから、彼の知名度は推して知るべしといったところだ。それにしても、あれから数十年を経た今でも、“クリームのドラマー”という形容で語られるというのは、いかにクリームが偉大なバンドだったかということか。今夜は彼を偲んで久しぶりにクリームを聴こう。謹んでご冥福をお祈りします。
October 8, 2019
℃-want you!
同好の諸氏よ、℃-want you!を知っているか、というか、℃-want you!を聴いたか。「℃-want you!」は名前だ。℃-want you!(シー・ウォンチュ!)という女の子だ。2017年末に雷音レコードからデビューして、7inchシングルを3枚連続でリリース、今年7月に4曲目シングルの「Cherry Coke」がリリースされて、8月にそれらのシングル曲をすべて収録したアルバムが発売された。素晴らしいぞ。楽曲もいいし、アレンジもいいし、歌声もいい。モータウンサウンドだったり、オールドタイムなロックンロールだったり、ウエストコーストなバラードだったりと、スイートでドリーミーでセンチメンタルなポップミュージックが好きな人はハマるぞ。そんでもって℃-want you!の歌声がすばらしくキュートだ。初期のThe Pen Friend ClubやSOLEILにハマったガールポップファンは必聴だぞ。
September 30, 2019
「Blue With Lou / Nils Lofgren」
5月(輸入盤は4月)に発売された、ニルス・ロフグレンの最新作だ。ルー・リードとの共作曲が6曲含まれている。1970年代末、ボブ・エズリンに紹介されてニルスとルーは楽曲を共作した経緯がある。そのうちの何曲かはそれぞれのアルバムで発表されたが、未発表のままだった5曲に、「シティ・ライツ」のカヴァー、ルーへ捧げたタイトル曲などを加えて作られたアルバムが、今回のアルバムだ。これが期待していた以上にいい。歌声もギターも、まさにニルス・ロフグレンだ。ロックンロールだ。しかも、味わい深い。こんな素敵なギター、久しぶりに聴く。素晴らしいぞ。
August 30, 2019
「LOLLIPOP SIXTEEN / SOLEIL」
SOLEILのサード・アルバムだ。今回もまたザ・フーあり、ビートルズありの60年代サウンド。もちろんモノラル録音だ。冒頭の「ファズる心」からして、いきなりピート・タウンゼントだ。素晴らしいぞ。しばらくこれも車の中でヘビロテになる予感。
July 26, 2019
ジョアン・ジルベルトを悼む
ジョアン・ジルベルトが、7月6日、ブラジルの自宅で亡くなった。88歳だった。今更説明の必要もないが、“ボサノヴァの父”、偉大なミュージシャンだった。彼の音楽が大好きだった。今夜は彼を偲んで「Chega De Saudade」を聴こう。心からご冥福をお祈りします。
July 8, 2019
「Unfinished Business - Demos, Private Recordings And Rarities / Waddy Wachtel」
近年はザ・イミディエイト・ファミリーの一員としてダニー・コーチマーらと活動しているワディ・ワクテル、昨年に続いて今年も来日し、ちょっと話題になったりもしている。そもそもは1970年代からリンダ・ロンシュタットやウォーレン・ジヴォンといった人たちのレコーディングに携わったギタリストで、その辺りのウエスト・コースト・サウンドが好きな人なら、ワディの名を知らなくても必ず一度はその演奏を聴いたことがあるはず、と言っても過言ではない(例えばリンダの「Simple Dreams」に収録された楽曲群、特に1曲挙げれば「Poor Poor Pitiful Me」の、あのゴキゲンなギター・サウンド、あれがワディのギターだ)。このアルバムは4月に発売されたもので、“Demos, Private Recordings And Rarities”とあるように、彼のこれまでのソロ・レコーディングからプライベート録音や未発表の音源などを1枚のCDに収録したものだ。だから“アルバム作品”としての統一感は望めないが、なかなか素敵な楽曲が揃っている。特にグルーヴ感たっぷりのロックンロール「High Maintenance Girlfriend」や、ロマンティシズム溢れる「Easier」なんかはサイコーだ。他にも素晴らしい楽曲が揃っている。イーグルス人脈の音楽が好きなファンなら、必聴必携のアルバムだぞ。
June 12, 2019
「ZARDよ永遠なれ 坂井泉水の歌はこう生まれた」
同好の諸氏よ、4月20日(土)午後9時からNHK-BSプレミアムで放送された「ZARDよ永遠なれ 坂井泉水の歌はこう生まれた」を見たか。素晴らしい内容だった。至福の120分だった。音楽ディレクターの寺尾広氏やレコーディング・エンジニアの島田勝弘氏、ジャケットデザイナーの鈴木謙一氏といった関係者の話もとても興味深かった。癌宣告を受けたという電話をもらったという話は、今聞いても、ファンとしてはつらいものがある。ほぼ同期で友人の大黒摩季の話も良かった。見終わった後、久しぶりにZARDを聴きまくったぞ。確かに、ZARDよ永遠なれ、だ。
April 22, 2019
「Live In Hollywood / Linda Ronstadt」
2月に発売されたリンダ・ロンシュタットのライヴアルバムだ。何とこれが彼女の初の公式ライヴアルバムだ。1980年にアメリカのTV局の特別番組用に収録されていたライヴ音源だそうだ。彼女がもっとも輝いていた時期のライヴ音源、内容は申し分ない。欲を言えばきりがないが、珠玉の12曲だと言っていい。ほぼ40年前の音源だが、聴いていると気分はあの頃だ。「Poor Poor Pitiful Me」のかっこよさとか、サイコーです。
April 17, 2019
「Both Sides / Marc Jordan」
Marc Jordanの新作だそうだ。Marc Jordanと言えば、何と言っても「Mannequin」と「Blue Desert」に尽きるわけだ。この2枚は今でもときどき聴く。いわゆる“AOR”の大名盤だ。その後も音楽活動は続けていたわけだが、どうにも初期2作のイメージが強すぎる。今回の新作はカヴァーが中心で、「Walk On The Wild Side」とか「People Get Ready」、「Wild Horses」、「Both Sides Now」なんて曲もやっているようだ。「Mannequin」から約40年、今のMarc Jordanはどんな音楽をやっているんだろう。それにしても、お年を召されてもダンディーですな。
March 17, 2019
ハル・ブレインを悼む
ハル・ブレインが3月11日、亡くなった。90歳だった。ハル・ブレインについては今更説明の必要もないだろう。レッキング・クルーのドラマーとして数多くの、それこそ本当に数多くのレコーディングに参加したミュージシャンだ。ママス&パパスにフィフス・ディメンション、フィル・スペクター関連作品からサイモン&ガーファンクルまで、大好きな音楽の多くにハル・ブレインのドラムがあった。ジョー・オズボーンに続いてハル・ブレインも帰らぬ人となった。今夜は彼の演奏を偲んで「明日に架ける橋」を聴こう。心からご冥福をお祈りします。
March 16, 2019
「すべてのありふれた光 / GRAPEVINE」
GRAPEVINEのニューアルバム「ALL THE LIGHT」が2月6日に発売されたが、このアルバムの最後に収録されている「すべてのありふれた光」がすごくいい。初めて聴いたとき、イントロのギターだけではGRAPEVINEと気付かずに、誰だろうと思った。このギターがおそろしくいい。何というのか、70年代ロックのいい部分を甦らせているというのか、久しぶりにこんなステキなギターを聴いたな、という気になった。GRAPEVINEがデビューしたとき、「まぁ、悪くない、けっこう好きな方かな」と感じたことを覚えている。と言って、以後、熱心に聴くことも無かったのだが、今回の「すべてのありふれた光」はちょっと衝撃だった。この路線は大好きだ。
February 27, 2019
「Golden Hour / Kacey Musgraves」グラミー受賞
2019年のグラミーでKacey Musgraves(ケイシー・マスグレイヴス)が四部門で受賞した。アルバム「Golden Hour」が「Album Of The Year」と「Best Country Album」を、さらに「Butterflies」で「Best Country Solo Performance」を、「Space Cowboy」で「Best Country Song」を受賞という活躍ぶりだ。ケイシー・マスグレイヴスは2013年にデビューしたカントリー・シンガーだが、ついにグラミーの「Album Of The Year」を受賞だ。デビュー盤は、当時購入してよく聴いた。セカンド・アルバムも、今回の「Golden Hour」も、気にはなりつつ、買いそびれていた。今更だが、「Golden Hour」、買ってきちんと聴こうかな、という気になっている。好きな声、好きな歌い方だ。
February 13, 2019
ミシェル・ルグランを悼む
フランスの作曲家、ミシェル・ルグランが1月26日に亡くなった。86歳だった。ミシェル・ルグランは「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」、「おもいでの夏」など、数々の映画音楽を手がけた。どの作品も気品溢れる美しいメロディが印象深い。彼を偲んで「おもいでの夏」を聴こう。ご冥福をお祈りします。
January 29, 2019
ジョー・オズボーンを悼む
1月27日放送の「山下達郎のサンデー・ソングブック 」(TOKYO FM)は「ジョー・オズボーン追悼特集」だった。ジョー・オズボーンは1960年代中頃から1970年代初頭にかけて西海岸で活躍した有名なセッション・ミュージシャン(ベース奏者)だ。ドラムのハル・ブレイン、キーボードのラリー・ネクテルと共に、いわゆる「ザ・レッキン・クルー」の主要メンバーとして、数多くの、それこそ数え切れないほどのミュージシャンのレコーディングに携わった。特にジョニー・リヴァース、モンキーズ、グラスルーツ、アソシエイション、ママス&パパス、フィフス・ディメンション、アメリカ、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーといった人たちでの仕事ぶりは印象深い。素晴らしいベーシストだった。昨年12月14日、81歳で亡くなった。膵臓癌で闘病中だったそうだ。訃報は聞き及んでいたのに本欄で書きそびれていたのだが、「山下達郎のサンデー・ソングブック 」を聞いて、やはり書いておかなくてはいけないと思った次第だ。ジョー・オズボーンの偉大な功績に敬意を表して、久しぶりに“ダンヒル・サウンド”を聴こう。心からご冥福をお祈りします。
January 28, 2019
第69回NHK紅白歌合戦
今回の紅白はなかなか楽しかった。「マリーゴールド」を歌うあいみょんを見れたのも良かったし、布袋さんも良かった。米津玄師も素晴らしかった。個人的にいちばん良かったのはユーミンのステージだ。別の場所で「ひこうき雲」を歌った後、紅白のステージに登場したユーミンは圧倒的な存在感だった。バンドのメンバーも凄かった。松任谷正隆はもちろんだが、鈴木茂や小原礼、林立夫などの顔ぶれが紅白のステージに揃うなど、当時は想像もしなかった。このメンバーが揃うに当たってどのようなやりとりがあったのかは推して知るべし(だいたい想像できるけど)。あれから四十年以上を経て、このメンバーをバックに「やさしさに包まれたなら」を歌うユーミンを、紅白のステージで見られるとは、aikoが号泣するのもわかる気がする。でも、けっきょく、最後のサザンのステージで、桑田とユーミンの絡みにぜんぶもっていかれちゃったな。
January 3, 2019