実際に車で桜島フェリーの定期航路を利用すると、料金の支払いも簡便で、航行時間も短く、一般的なカーフェリーの感覚ではなく、いわば“有料の動く橋梁”とでも言うべき印象だ。
乗船料金は桜島港での支払いだ。桜島港から乗船する場合は乗船前に、鹿児島港から乗船する場合は下船後に、通路上に設けられた料金所のゲートで、窓越しに(車から降りることなく)支払う。有料道路や駐車場の料金所の感覚に近い。一般的なカーフェリーでは出港時刻より早めに発着所に行って待機所に車を停め、待ち時間の間に車検証を携えて窓口へ行き、乗船券を購入しなくてはならないものだが、そうした手間は必要ない。何しろ昼間は10〜15分間隔での運航、手際よく乗船させなければ航送の量を処理しきれないのだろう。鹿児島港からの利用の場合、料金の支払いをすることなく乗船してしまうわけで、初めての人は戸惑うこともあるようだ。
航行時間はわずかに15分、地元の人たちは乗船中も車から降りず、運転席に座ったままでフェリーが着くのを待っている(その場合、フェリーの利用に際して一度も車から降りることがなく、まさに“動く橋梁”感覚である)。車から降りて船内客室に向かうのはもっぱら観光客だ。