鹿児島県鹿児島市、錦江湾に面してウォーターフロントパークが設けられている。この辺りは鹿児島本港の中心部だったところで、今もその遺構の一部を見ることができる。残暑の厳しい八月中旬、ウォーターフロントパークを訪ねた。
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパーク
鹿児島県鹿児島市の錦江湾岸、桜島フェリーターミナルや「いおワールドかごしま水族館」、商業施設「ドルフィンポート」などが設けられた本港新町地区のほぼ中央に「ウォーターフロントパーク」という臨海公園が設けられている。園内は開放感に溢れた芝生の広場で、東にはその名が示すように錦江湾を臨み、その向こうに桜島の姿を見る。立ち寄る観光客の姿も少なく、のんびりと穏やかな空気感に満ちた公園だ。
追記 ウォーターフロントパーク西側に道路を挟んで隣接していた「ドルフィンポート」は2005年(平成17年)にオープンした商業施設だったが、2020年(令和2年)3月に閉業した。
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパークの最大の特徴であり魅力なのは、やはり鹿児島港を臨む立地にあると言っていい。眼前に横たわる錦江湾と、その向こうに聳える桜島、湾に突き出た防波堤の姿や錦江湾を往来する船影などが織り成す景観は旅情を誘って風趣に富んでいる。園内をのんびりと散策するのも楽しく、湾を臨む岸辺から桜島や錦江湾を行き来する船の姿を眺めながら時を過ごすのも悪くない。
ウォーターフロントパーク
園内の一角には子どもたちのための水遊び施設が設けられており、夏のお昼時には子どもたちの歓声が響く。中央部には噴水も設置され、高く上がる水の飛沫が涼やかだ。水遊びを楽しむ子どもたちの姿も、“夏の風物”のひとつと言えるかもしれない。
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパークのある一角は、鹿児島港の中心部だったところだ。パークの北側、水路を挟んだ対岸には「新波止」や「遮断防波堤」、「一丁台場」などの石組みの遺構を今も見ることができる。水路を跨ぐ歩道橋もあるから、遺構の上に立ってみるのも一興だろう。一角には「鹿児島港の面影」と題して鹿児島港の変遷を写真を添えて簡単に解説したパネルも設置されている。訪れた時にはぜひ見ておきたい。
ウォーターフロントパーク
旧港の遺構を水路の対岸に見る辺りは、水路に沿ってボードウォークが延びている。ボードウォークを辿って散策を楽しむのもよいものだ。遺構との間の水路は「いおワールドかごしま水族館」の施設と繋がっており、トレーニングを行ったり自由に遊んだりするイルカの姿を見ることもある。常に見られるというわけではないようだが、「イルカ水路」の名で知られ、人気を集めているようだ。
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパーク
パークの南端部には赤い灯台が残されている。国の登録有形文化財(建造物)にも指定された「鹿児島旧港北防波堤灯台」だ。1923年(大正12年)から1934年(昭和9年)にかけて行われた鹿児島港の大改修の際に築造された北防波堤の先端に、1934年(昭和9年)に設けられたものという。北防波堤は1986年(昭和61年)から行われた本港再開発によって埋め立てられてしまったが、灯台は往時のままの姿でウォーターフロントパークに保存されているというわけだ。灯台は総高11m、鉄筋コンクリート造りの四角いガス発生室の上に鉄筋造りの灯塔が載る。赤く塗られた姿から「赤灯台」として親しまれているという。

傍らには旧港北防波堤灯台について簡単に解説したパネルが設置されている。パネルには昭和初期や1980年代の港の写真が添えられており、特に1985年(昭和60年)と2011年(平成23年)に上空のほぼ同じアングルから捉えた写真が並べられているのが興味深い。その三十数年の間にこの付近が埋め立てられ、大きく姿を変えた様子がよくわかる。1980年代半ば以前に鹿児島を訪れた経験のある人なら、現在の桜島フェリーターミナルなどの姿に驚かれると思うが、この二枚の写真を見比べれば、鹿児島港の変遷がよくわかるだろう。現在の桜島フェリーターミナルや「いおワールドかごしま水族館」、「ドルフィンポート」などが建つ辺りはすべて1980年代半ば以降に埋め立てられたところである。
ウォーターフロントパーク
ウォーターフロントパークは特に“観光名所”というわけではなく、訪れる観光客の姿は多くはない。そのため観光地特有の喧噪感がなく、のんびりとした空気感が魅力だ。ゆったりとした気分で桜島を眺め、港の風情を楽しむのがお勧めだろう。その下には鹿児島港の変遷の歴史が眠っている。防波堤の遺構や「赤灯台」、解説パネルに添えられた写真などから、古い時代の鹿児島港の様子を思い浮かべてみるのも楽しい。
参考情報
交通
ウォーターフロントパークへは鹿児島市電のいづろ通電停や朝日通電停が近い。いづろ通電停からはマイアミ通りを西へ辿れば数百メートルの距離だ。朝日通電停からは朝日通りを西進、これも数百メートルの距離しかない。市役所前電停や水族館口電停からも1km足らず、充分に徒歩で行ける。

路線バスや周遊バス、南国交通によるドルフィン号などのバスを利用するのも便利だ。それぞれの「ドルフィンポート」バス停で降りればウォーターフロントパークが目の前だ。

桜島フェリーターミナルや高速船ターミナルなどからはとても近く、徒歩で5分ほどだ。

車で訪れる場合は周辺に点在する駐車場を利用するといい。

飲食
公園内には飲食店などはない。予めお弁当やサンドイッチなどを用意して訪れ、公園内でアウトドアランチを楽しむのも悪くない。

周辺
ウォーターフロントパークの北側には「いおワールドかごしま水族館」と桜島フェリーターミナルが並ぶ。桜島フェリーは便数も多く、約15分で鹿児島港と桜島港を結ぶ。桜島へ渡るのも気軽だ。

ウォーターフロントパークからマイアミ通りを経て西へ辿れば1km足らずで天文館の中心部だ。朝日通りを西へ進めば、これも1km足らずで西郷隆盛像、そこから南へ少し行けば照国神社、北へ400mほどで鶴丸城趾だ。

鹿児島市電や周遊バスを利用すれば「維新ふるさとの道」や城山、石橋記念公園仙巌園など、鹿児島市街地と周辺に点在する観光名所にも便利に訪れることができる。
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